機械設計者の立場で各種加工方法を学ぶことは、自分の設計図面が製作段階で自分
の意図をより正確に実現する手段として非常に重要である。
まづ意図する性能を発揮するための構造部品が、製作可能な形状であるか? また、
目的とする部品をより安価に実現する手段(材料・加工工程・後処理)は無いか?
などと工夫を凝らす時に自分の持ち玉が豊富なほど有利になることは言うまでもない。
各種の加工法を身につける最も確実な方法は、自分で体験して沢山の失敗をしな
がらその反省を基にノウハウを積み上げて行くのが良いと思うが、日進月歩の現代で
はその様な余裕は許されない、したがって先輩のノウハウを有効に活用して欲しい。
中級機械設計技術者として、貪欲なくらいの知識習得意欲が旺盛な人であって欲
しいと期待する。そこで下記のベテラン技術者の設計ノウハウを参考にして下さい。
2−1、切削加工のいろいろ
代表的な工作機械としては、旋盤・フライス盤・ドリル盤などが挙げられいづ
れも被加工物から不要な部分を刃物により切削屑の形で取り除いた残り部分が所
望の部品形状と言うことになる。
機能上必要な形状が以下に示す加工機械で製作可能な形でなければ、図面が
画けても「絵に画いた餅」と現場から批判を浴びることとなる。よって、図面を
画くときには加工の手順(特に刃物が届くか?刃物の大きさは適切か?)を想定
しながら部品の形状を決める必要がある。
旋盤加工;「丸物加工」と俗に言われているが、工作物を回転させ、刃物に切込み
と送りを与えて円筒形の部品を作る作業で、刃物の切込みと送りの組合わ
せを入れ換えると端面を削る加工ができる。
普通旋盤
(engine lathe)
用途:切削(棒材)
主軸に加工物を取り付け回転させ、バイト(刃物)で切込みを加え、軸方向に送りをあ
たえる事で切削する。材質により切削速度、刃物の確度や送り、工具材質等を考慮し、作
しなければいけない。
工作方法の種類
外丸削り、テーパ削り、総形削り、面削り、おねじ(めねじ)切、面取り、丸み付け、
ローレット加工、中ぐり、突切り、穴孔け、リーマ仕上げなどの加工ができる。
メーカー名: ワシノ LR−55A型
CNC旋盤
(computer numerical
control lathe)
用途:切削(棒材)
普通旋盤と違いNC(数値制御)による加工である。タレットと呼ばれる場所に、ド
リル、中ぐり用バイト、ねじ切りバイトなど必要な工具を計12本取り付け可能である。
普通旋盤では加工困難な曲面なども所要寸法を入力するだけで容易に加工でき、100
0分の1ミリまでの入力が可能である。主軸最高回転数も4500rpmと高速切削も
可能である。困難な計算もコンピュータが自動的に行ってくれるので作業者も容易にプ
ログラミングでき、加工時間も短くて済み、大量生産向けの旋盤である。
メーカー名: 森精機
形式: SL−25
フライス加工;複数の切れ刃をもつ刃物を回転させながら少しずつ削って平面にす
る加工をフライス削りと言う。フライス盤は、旋盤と同様に加工範囲
が広く、その種類も多い。主に使用される種類は、横フライス盤と立
てフライス盤である。横フライス盤は、主軸がテーブル面に平行な横
軸に回転し、工作物に上下・前後・左右の3方向の送り運動を与えて
削るフライス盤を言う。主に平フライスのような円筒外周に切れ刃を
持った刃物で平面や溝を削る。
立てフライス盤は、主軸が垂直に取り付けられ、主に正面フライス
のような円筒端面に切れ刃を持った刃物で平面を削る。また、エンド
ミルを用いて側面や溝を削ることも行われる。
万能フライス
(universal milling
machine)
用途:切削(平面)
多数の葉をもったフライスを回転させ、工作物に送りを与えて切削する工作機械で、円
筒外周に切刃を持ったフライスで加工するものが横フライスである。フライスにはみぞ、
半月キーみぞ、歯切り、みぞ削り、すりわり、Tみぞフライスなど多くあり、多数の刃で
切削するため、効率が良い。
メーカー名: 新潟鐵工所
形式: TYPE 2UMA
立てフライス
(vertical milling
machine)
用途:切削(平面)
旋盤や、平削り盤などのように、単一切刃(バイト)で切削する機会と異なり、多数の
切刃をもったフライスを回転させテーブル上に取り付けた工作物を送りながら切削する。
メーカー名: Hitachi Seiko,Ltd. Japan
形式: TYPE 2MW FORM V
LONGITUDINAL TRAVEL 710mm
CROSS TRAVEL 300mm
VERTICAL TRAVEL 400mm
ドリル加工;ドリル(螺旋状に捩れた刃を持つ棒)で穴あけ加工を行う作業をドリ
ル加工と言い、この工作機械をボール盤と言う。ボール盤の主軸に取り
付けたドリルに回転を与え、軸方向に送り運動を与えて加工する。
NCボール盤
NC制御のボール盤
NCの加工プログラムを変更することにより、
様々なワークの高精度加工に対応。
ドリルの代わりにチップで加工することにより、
加工精度を上げています。
用途:穴孔け(きりもみ)、リーマ仕上げ、座ぐり等
主軸に刃物(ドリル、リーマ)を取り付け、テーブル上に工作物を固定し主軸に送りを
あたえ加工する。穴孔け加工を行う再は工作物の種類、刃物の材質、切削速度、工作物
の支持、切削油剤を考慮し作業にあたる。卓上ボール盤は13mmまでだが、直立ボール
盤は基本的に13mm以上の刃物の加工である。
現在では、殆どの機械加工部品は「マシニングセンタ」で加工されることが多い。
その理由は、加工精度が優れていることに加えて加工手順がプログラム化できる
ため、熟練技能士を必要とせず加工部品を加工治具にセットするだけで、均一な品質
の部品が量産可能であるためである。
2−2、各種加工用工具と段取りについて
切削の理論;
切削加工を行うとき、工作物の材質・形状・寸法・仕上げ面の精度・および
生産数量などによって、使用する工作機械や使用工具を選定する。良い切削加工
をするには、切削加工の仕組みを知り、切削条件を適切に選択する必要がある。
*切削の仕組み;切削は、バイトの先端が工作物に食込み、その部分が塑性変形
を起こし押し出されて、すくい面の上を滑って切り屑として排出されることで、
切り屑生成の状態により、流れ形・せん断形・裂断形切り屑となる。
流れ形切り屑;図1(a)に示すように、バイトのすくい面に沿って連続的にれ
るように出てくる状態の切り屑を流れ形切り屑と言う。流れ形切り屑は、バイトと
接触している側は、こすられてきれいに光っているが、接触していない側は、ざ
らざらしている。また、このような切り屑が生じる場合、仕上げ面はきれいだ。
せん断形切り屑;図1(b)に示すように、バイトが工作物にある程度食込んだ
後にせん断滑りを生じ、短い切り屑となる。この様な切り屑をせん断切り屑と言う。
この切り屑が出来る場合は、切削中に工作機械に小さな振動を生じ、仕上げ面は
あまりきれいにならない。
裂断形切り屑;図1(c)に示すように、せん断滑りが生じないで、バイトの
進行方向に向かって、亀裂が生じて、むしり取られたような切り屑ができる。この
ような切り屑を裂断形切り屑と言う。裂断形切り屑の出来る場合には、工作物の
表面にも亀裂を生じて仕上げ面は粗くなる。
*構 成 刃 先;切り屑のカスがバイトと切り屑に挟まれ、大きな圧力と熱に
によって刃先の先端に堆積する。この付着物は非常に硬く、刃物に代わって切削を
行うので構成刃先と言う。
図2に示すように、構成刃先は、ある程度大きくなると脱落するので、絶えず、
成長・脱落を繰り返す。
鉄やステンレス、アルミニウムなどを比較的低速で切削すると、一見、流れ形切
り屑のようであるが、この構成刃先が生じて、不安定な切削状態となり、しばしば
仕上げ面が粗くなることがある。
構成刃先の生じない切削条件は、バイトのすくい角を大きくしたり、切削速度や
送り速度を大きくして刃先に積もる異物が流れ出る条件で加工する。なお、すくい
角を−30°の負角にして安定した構成刃先を発生させて、構成刃先を活用した切削
法もある。
*切 削 条 件;切削条件とは、それぞれの加工に適した切削速度・送り速度・
切込量などの要素を言う。
切削速度;切削速度とは、刃物が工作物から不要な部分を削り取る速度で、仕上
げ面の粗さ・切削加工能率・刃物の寿命などに影響する重要な値である。
切削速度が大きいほど仕上げ面の粗さは良好になり、切削加工時間も短縮される。
しかし、切削速度の増加とともに切削温度は上昇し、バイトの寿命は急激に短くなる。
通常の切削加工においては、刃物の寿命を60〜100分に定めて切削速度を選定
している。これを経済的切削速度と言う。
切削速度の選定は、工作物の材質・刃物の材質・刃物の形状・仕上げ面の粗さによ
りおこなわれる。表1に主要金属材料の旋削における切削そくどを、表2にフライス
削りにおける切削速度を示す。
〔注〕A:高速度工具鋼,
B:超硬合金,
HB:ブリネル硬さ
(日本機械学会編:機械工学便覧新版)
表2 フライス削りにおける標準切削速度
(切削速度はm/min,送りは1刃当りmm)
(日本機械学会編:機械工学便覧新版)
図3に示すように、旋盤やフライス盤の切削加工において、工作物または刃物が
回転運動する場合、切削速度と回転速度の関係は次のようになる。
1,000v/πd
ここで、v;切削速度〔m/min〕、d;工作物が回転して削られる面の直径または回転
する刃物の直径〔mm〕、n;工作物または刃物の回転速度〔rpm〕である。
送り速度と切込み量;刃物が工作物に食込む深さを切込み量と言い、工作物が回転
しているときに切込み方向と直角に一定の速度で移動する量を送り速度と言う。送り
速度と切込み量の積を切削面積と言い、送り速度と切込み量の関係を図4に示す。
また、切削面積が大きいほど切削効率は良いが、刃物に加わる力は大きくなり、切削
温度も高くなるため、刃物寿命が短くなる。
送り速度は、旋削では1回転毎の刃物の移動量で表され、単位はmm/revである。
また、フライス削りでは、フライスの1枚の刃ごとに送られる移動量で表されるため、
フライス盤のテーブルの送り速度との間には、次のような関係がある。
Vf=S×ZN
ここで、Vf=テーブルの送り速度〔mm/min〕、S:1刃当たりの送り量〔mm/刃〕、
Z:フライスの刃数、N:フライスの回転数〔rpm〕である。
また、送り速度は仕上げ面精度にも大きな影響を与える。
*切 削 液;
金属を切削加工するときには熱が発生する。この熱で、刃先の温度が上昇し、刃物先端
の硬さが低下して、切削能率が急激に悪くなる。
切削加工による仕上げ面精度を良好に保つため、切削液を用いる。切削液の効用は、
摩擦を減らす潤滑作用の他に、刃物先端温度を下げる冷却作用、切り屑を押し流す除去
作用がある。
*刃 物;刃物は、工作物の材質・加工面の形状・精度と工作機械の種類によって適切
なものが使用される。
用途・名称・形状;旋盤で使用されるバイトは、図3(a)のような形状である。バイ
トの上部の切り屑が流れ出る面をすくい角と言い、すくい角は大きいほど切り屑の流れ
が良好になり、仕上げ面の仕上げ精度は向上するが、刃先の強さが低下し、バイト寿命
が短くなる。また、バイトが移動する方向の面に付けた角度が逃げ角であり、バイトを
工作物に食込ませるのに必要な角で、バイトと工作物の干渉を避けるために設けてある。
平・形削り用に使われるバイトは、切削中、大きな力がバイトに作用して、バイトが
たわみ、工作物に食込まないような図3(b)に示す形状で、腰折れバイトと言う。
穴あけに使われる刃物をドリルと言い、先端に2枚の切れ刃を持ち、切り屑を外へ追
い出す2本の溝から出来ている。図3(c)にその形状を示す。
フライス盤では、平面を加工する刃物として、平フライスのほか、図3(d)に示す
ように、正面フライス、更に、溝削りや端面削りを行う側フライスやエンドミルがある。
平フライスは刃が捩じれており、切削抵抗を減少させる工夫が施されている。
刃物材料; 切り屑が生成しているとき、工作物と刃物の摩擦により刃物先端に熱が
蓄積され、刃先の温度が高くなる。切削加工に使われる刃物の材質には、高い温度でも
硬さが低下しないものが使われる。刃物に使用する材料はには、炭素工具鋼・合金工具
鋼・高速度工具鋼・超硬合金・セラミックス・サーメット・ダイヤモンドがある。
炭素工具鋼は、炭素を0。6〜1。5%含んだ鋼で、焼入れをして刃物として使う。安価で
あるが、高温での硬さが低く、一般的にリーマやタップ、やすりなどの低速度切削用に
使われる。
合金工具鋼は、炭素工具鋼にクロム・タングステン・ニッケルなどを加えて、耐摩耗
性・耐衝撃性を向上させたもので、帯のこ・バイト・たがねやポンチ・更に冷間加工・
熱間加工用ダイスに用いられる。
高速度工具鋼は、タングステンやクロム・バナジウムを加えることによって、高速度で
切削しても刃先の温度が600℃位まで硬度が低下せず、切削能力が落ちない材料である。
高速度工具鋼は、バイトやフライス・ドリルなどに用いられている。
超硬合金は、炭化タングステンの粉末を溶かしたコバルトで焼結したもので、高速度
工具鋼に比べて、高温において硬く耐摩耗性に優れているため、より更に高速切削が
かのうである。しかし、超硬合金は粉末を固めて成形するため、複雑な形状の刃物製作
は困難である。
セラミックスは、酸化アルミニウムの粉末に少量のマグネシウムや珪素などを加え成形後、
1600℃以上の温度で焼結したもので、高速切削に耐えるが、断続切削のような衝撃作用
に脆い欠点がある。
加工治具と段取り;
被加工物を加工機械で加工する場合、加工物をテーブルに固定する必要がある。(
旋盤の場合はチャックで掴む)1ヶのみの加工では汎用バイスで掴んで加工面を刃物が
加工し易い様な角度に固定するだけで十分だが、同一作業を繰り返し多数行う場合、
一般に専用の加工治具を準備した方が作業能率が向上する。
機械加工で被加工物を刃物で切削する時間を「加工時間」と呼んでいるが、実際に
加工のために、被加工物を機械に取り付けたり・外したりする準備時間・後処理時間を
「段取り時間」と呼んで加工時間と区別している。これは、加工時間が設計図面である
程度決まってしまうのに対して、段取り時間は加工治具を工夫することで大きく異なる
ため、加工分野における合理化達成度合いを判断する尺度としてよく議論される。
ところが加工治具の工夫もさることながら、被加工物の設計者が部品機能を満足さ
せながら形状を工夫することでこの「段取り時間を短縮させる」ことが比較的簡単に
出来るものである。そのために必要な事柄は……
(1)設計者が各種加工治具を勉強し、部品の形状を決める段階で加工手順を想定し
ながら設計すること。
(2)シングル段取り(加工治具に一回のセッティングで全加工が完成する)が可能
な形状を目指した設計を常に心掛ける。
(3)加工刃物の当たり方向を極力一方向に統一する。
(4)加工精度を厳しく要求する場合は必ず同一段取り内の加工に限定すること。
(段取り変更を行うとその時点で加工精度は一段劣ることを配慮すべし)
(5)加工工程が出来るだけ少なく、加工がシンプルで精度が出し易い形状とする。
また、使用刃物の種類・姿勢をあまり変えないで済むように工夫する。
(6)加工刃物の逃げがあり、幾分行き過ぎても大丈夫な余裕のある設計とする。
(7)切り穴は曲がらないで、短く真っ直ぐに加工できるよう注意すること。
2−3、鋳造成形について
初級で砂型鋳造・ロストワックス鋳造・シェルモールド鋳造・ダイカスト鋳造の
原理的ポイントを既に説明したので、ここでは、これら鋳造成形における設計上の
注意点に重点を絞って説明する。
砂型鋳造
*鋳造用の砂;鋳造に用いられる鋳物砂は、溶解して液体となった金属の温度に
よって解けたり変質したりすることの少ない砂が用いられる。この砂は、天然に
ある砂を精製して用いたり、耐熱性のある岩石を砕いて作られた物が用いられる。
鋳物砂の種類:鋳物用の砂は、図1のようにJISでは鋳型用の山砂とけい砂
に分類される。粘土分が2〜40%の砂を山砂と言い、粘土分が2%未満でけい
酸(SiO2)分が85%以上の砂をけい砂と言う。
鋳物砂の成分:鋳物砂は、産出する地域や岩石の種類よって異なるが、けい酸
分が多いほど良質の鋳物砂といえる。表<1は、鋳物砂の成分例を示す。
*鋳造用模型;所定の形状の鋳物を作るためには、そのもとになる模型を作らな
くてはならない、模型は木材や金属で作り、それぞれを木型・金型とよび、総称
して原型と言う。一般的には、木材やアルミニウム合金によって作るが、鋳物の
種類によっては、石膏・発泡スチロール・ろうなどが用いられる。
木型の種類:木型は次の種類に分けることができる。これらの例を図1に示す。
(1) 鋳物の外形とほぼ同じ形をした木型:立体型(単体型・割り形・組立て型)
(2) 鋳物の断面の形状をした木型:板型(引き型・かき型)
(3) 鋳物の中空となる部分をつくる木型:中子取り
木型の寸法と特徴
所定の寸法と形状の鋳物をつくるためには、木型に図2のような各寸
法を加えて、大きめの木型をつくる必要がある。
(1) 縮み代:金属が溶解すると膨張し、凝固すると収縮する。木型に
加える収縮する分の寸法を縮み代という。
(2) 仕上げ代:凝固してできた鋳物は、所定の寸法に仕上げることが
必要となる。切削などによって所定の寸法に仕上げるために必要な
寸法を仕上げ代という。
(3) 抜き代:木型は鋳物砂の中に埋められて突き固めたのちに抜き取
られて、鋳型の空洞部ができる。木型の抜取りが容易に行えるよう
に、木型にこう配をつけておく必要がある。このこう配をつけるた
めに必要となる寸法を抜き代という。
木型に必要な工夫
溶解した金属が冷えると、結晶をつくって凝固する。鋳物は、金属が
凝固してでき上がるために、凝固する際の結晶のでき方が鋳物の性質を
決定する。結晶ができる際には、冷却の早い部分から結晶となる特徴が
ある。角の部分では冷却の早さの違いにより、図3(b)のような結晶の
でき方となる。このような結晶となると強度が小さくなる傾向がある。
このため、特に必要な場合を除いて、木型の角の部分を丸くしておくこ
とが必要となる。このようなくふうのことを、それぞれ面取りとすみ肉
という。面取りをした部分の結晶は図3(a)のようになり、強度が大き
くなる。
*鋳 型 ;
鋳物用の型には、溶解した金属(湯という)を型の中の空洞に流し込
むための湯口や湯道などが必要である。このように鋳物をつくる型を鋳
型といい、耐熱性に優れた砂や金属でつくられる。鋳物砂でつくられた
鋳型を砂型といい、金属でつくられた鋳型を金型という。金型の場合は、
金属を削ってつくられる。設計どおりの鋳物をつくるためには、鋳物と
なる空洞を、金属の収縮する分を考えて収縮分だけ大きくつくる。
鋳型の種類
鋳物砂を用いて鋳型をつくる方法には、次のような種類がある。
砂 型(図1)
(1)生 型:山砂は粘度分が多いので、水を加えて湿らせて突き固め
て鋳型をつくる。このようにつくられた鋳型を生型という。
(2)ガス型:けい砂にけい酸ナトリウムを4〜6%加えて混練した鋳物
砂に二酸化炭素ガスを吹き込んでつくる鋳型をガス型という。けい
酸ナトリウムと二酸化炭素ガスが化学反応し、強固な鋳型ができる。
(3)シェル型:金属の模型(金型)を熱して、それにフェノール樹脂
を被覆した鋳物砂を覆いかぶせると、金型に接した鋳物砂が固まっ
て鋳型ができる。加熱すると100℃で軟らかくなり、180〜240℃で
固まるフェノール樹脂の性質を利用した鋳型である。
金 型 金属を削ってつくった鋳型を金型といい、この金型を用い
て鋳造する方法には次のような方法がある。
(1)ダイカスト:溶解金属に大きな圧力を加えて、金型に押し込んで
凝固させる。
(2)金型鋳造:溶解金属を金型にゆっくりと注いで凝固させる。
鋳型の構成とくふう
溶解金属を鋳型の空洞部に速やかに注いでよい鋳物をつくるために
は、図2のように湯口、湯道、押湯、ガス抜き穴、上がりなどが必要で
ある。これらは、溶解金属の種類や鋳物の大きさなどによって異なり、
適した位置に適切な大きさで設けられる。
金属が凝固するときに容積は収縮するので、鋳物の中に収縮による空
孔ができやすい。これをひけ巣といい、ひけ巣を鋳物の外部に余分な部
分をつくるようにしたところを押湯という。押湯は、図2のように大き
くつくって鋳物本体より遅く凝固するような働きをする。
鋳物をつくるときは、溶解金属が均一な冷却速度で凝固してひけ巣を
つくらないようにするため、図3のように冷やし金を当てて薄肉部と厚
肉部が同時に凝固するようなくふうがされる。
◎ 金属の凝固
溶解した金属が冷えるときは、図4のように結晶をつくって凝固する。
はんだが凝固するようすを注意深く観察してみよう。
*鋳物部品の設計で注意すること;
(1)模型・鋳型を作り易い形状とすること。
鋳物は可能な限り模型・鋳型を作り易い簡単な形状を心掛け、複雑な曲面を
避けて模型の分割が少なく、また残し型とならないように工夫し、出来れ
ば板型が使用できる構造とするのが良い。
(2)鋳造の作業性から、注子の保持・型抜き・砂落しなどが容易な構造とする。
(1) 中子は簡単な構造であり、強固に保持できる構造とすること。(下図参照)
(2) できれば中子が不要になる構造も検討すること。(前頁図中参照)
(3) 模型を砂型から抜き易くするために、適当な抜け勾配を付けること。また型抜
きに支障となる出張りは避けるようにするのが良い(前頁右参照)。抜き勾配
は、通常作業の場合1/20〜1/30、機械込めの場合1/50〜1/100であり、JISで
は鋳鉄品・鋳鋼品・ダイカスト・アルミニウム合金鋳物に対し、鋳造上の必要
に応じて、図面に指定の無い場合に付けることができる抜き勾配の最大値が
規定されている。
(4) 砂落しのし易い、完全に砂落しのできる構造とすること(下図左参照)。原則と
して鋳物砂が閉じ込められる構造は避け、開放形にするかまたは大きな掃除穴
を設けること。
(3)ガス抜きを十分配慮した設計をすること。
(1) 鋳型に溶融金属を流し込むときは、空所の空気を押出す必要があり、また内部
に発生するガスを逃さなければならない。従って、特に中子砂のガス抜きが容
易な構造とし、必要な個所には十分大きなガス抜き穴を設けること(下図右)。

(2) 水平の位置で鋳込まれる面は、ガスやスラグなどが停滞して不良になりやすく、
変形もしやすいので、ガスが残る傾向が多い広い水平面はできるだけ避け、な
るべく傾斜面とするのが良い(下図参照)。
(4)内部応力の発生が少なく、鋳物巣・粗結晶などの鋳造欠陥を生じることの少な
い鋳物の形状・寸法を心掛けること。
(1) 鋳物の肉厚は、できるだけ均一な厚みとすること。均一な厚みは、溶融金属の
冷却速度が均一で凝固が一様であり欠陥も少なく変形も少ない。
(2) 肉厚の変化部分を設けなければならない場合には肉厚の急変を避けるようにす
ること。肉厚が変われば溶融金属の冷却速度が変わり、内部応力により鋳物に
割れが発生することにもなるので、出来るだけ穏やかに肉厚が変化するように
すること。JISでは砂型鋳物の肉厚変化部分は、基本的に下図上に示す基準で、
丸みと勾配部の値を運用するように規定されている。
(3) 鋳物肉の交差部のスミには、適当な丸みを付けること。溶融金属が凝固する際
の、金属結晶の異常成長に基づく欠陥の発生を回避したり、また造形技術上の
理由などから、交差部の内側と外側を原則として丸めること。JISではL字・
V字・T字交差部について、丸み及び勾配部の値が規定されている(下図下)。
但し交差角が60度以上の(V字及びL字の)交差部では、内側のみを丸め外側
をとがらせても良いとされている(下図下(b)参照)。
(4) 鋳物肉の交差は、十字交差及び交差角の小さいV字交差を避け、出来るだけT
字交差とすること。十字交差部及び交差角の小さいV字交差部は、過度に肉厚
が増すし、内部欠陥が生じる恐れが多いので、T字交差を組み合わせたり、T
字形に近い交差方式を取るのが良い(下図参照)。
(5) 造形技術上の理由で、鋳物の端部のカドに設けられる丸みは、カド部の材質欠
陥を防止するのに役立つ。JISでは各種鋳物材質に対するカドの丸みの最小値
が規定されている。
(6) 肉厚の肥大部分を避け、贅肉をなるべく減らすようにすること、肉厚の肥大部
分には、内部応力や欠陥が生じやすく、また多量の押し湯を必要とするので、
不要な贅肉は除去するのが良い(下図参照)。
(7) 残留応力が生じやすかったり避けられない部分には、応力や変形を逃がしたり
軽減したりすることが出来る形状・構造とすること。
例えばリムをアームで固着するハンドルでは、リムはアームに比べ冷却速度が
遅い為に、リムには引張応力・アームには圧縮応力が生ずる。下図(a)では、
直線アームであるのでリムは収縮変形しにくく大きな残留応力を生じるが、
(b)のように湾曲アームにすると、リムの収縮変形が容易になり残留応力は
大幅に減少する。また(c)ではハブを分割して鋳造し、のちにリングを嵌めて
一体化しているので、ちゅうぞうによる残留応力は殆ど生じない。
(5)鋳造による変形・亀裂の生じやすい部分には、適当にリブを設けてそれを防
止すること。
リブがまず凝固した後に本体が固まるように、リブの厚さは付近の(本体の)
肉厚よりも薄くしなければならない(下図参照)。
(6)鋳物の最小肉厚や鋳造しやすい肉厚は、鋳造法・鋳物の材質・大きさ・形状な
どにより異なるので十分検討の上適切な肉厚に設計すること。
なお鋳物の材質ごとの最小肉厚と、鋳物の大きさに対する鋳造し易い標準肉厚
は、上表の通りとされている。
(7)鋳物の仕上げ代を念頭において、鋳造品設計を行うこと。
鋳物は仕上げ代を加えて製作されるが、仕上げ代は鋳造法・鋳物の材質・大きさ
・形状・変形量・鋳肌の良否・仕上げ程度などによってかなり相違する。
従って鋳造部門の見解を十分に聴取する必要がある。
(8)鋳物の座の高さhは、それが取り付けられる部分の肉厚をtとすると、鋳鋼の
場合h<1.5t、鋳鉄およびその他の金属鋳物の場合h<2tを標準とすること。
なおこの寸法には当然仕上げ代が含まれるので、仕上げ後の座の最大(標準)
高さは、自ずから決まってくることになる。
(9)鋳物の製作寸法誤差を十分に配慮した設計をすること。鋳物は一般に、溶融
状態より凝固するときに収縮する(長さは鋳鉄で約1%・鋳鋼で約2%位)。
従って標準尺に金属の縮み代を加算して作った延び尺(鋳鉄用・鋳鋼用・青銅用
など各種あり)によって模型を作り、鋳造することになる。
勿論JISでは鋳鉄品・鋳鋼品・ダイカスト・アルミニウム合金鋳物の長さと肉
厚の普通許容差が規定されている。しかしそれぞれの鋳物は、形状・構造・肉厚
などが異なるため収縮の割合が変わったり、また鋳造作業の不手際(中子のずれ
など)による誤差も多少生じたりして、必ずしも全てが完全にJISの規定どおり
に出来上がるとは限らない。それ故に、特に大形鋳物や複雑な構造の鋳物などは、
ある程度の誤差(JISの規定以上に)の発生を見越した余裕のある設計を行うの
が安全である。
(10) 機械加工を行う鋳物は、鋳造によって狂いを生じない、また加工が容易
な面を加工基準面に選定すること。なお仕上げ面は、(加工の都合上)出来るだ
け同一側に集めるように心掛けるのが良い。
(11) 大形鋳物や複雑な形状・構造の鋳物は、支障のない範囲内で、一体構造
に鋳込まずに幾つかの部分に分割するようにし、簡単な形状のものを組合わせ
るやり方をとるのが、鋳造上・機械加工上・コスト上などで有利である。下図
(12) 鋳鉄鋳物は、衝撃荷重のかかる部品には使用せず、また鋳鉄鋳物のリブ
は、原則として圧縮側にとること(下図(下)参照)。
鋳鉄品は圧縮荷重には強いが、引張り荷重・衝撃荷重には弱いので、その
特性を考慮した設計を行うこと。大きな衝撃荷重のかかる部品には鋳鋼品また
は溶接構造品を使用するのが良い。
(13) 大形及び重量鋳物は、吊上げ作業を考慮した設計をすること。
大形及び重量いものは、鋳造・加工・運搬作業時にたびたび吊上げる必要があ
るので、当初より吊上げ作業が安全・確実に実施可能なように準備し、必要な
場合には適当な吊上げ用把手・金具などを鋳込んでおくと良い。
(14) 鋳造技術担当者との連絡・打合せを密にし、鋳贓品設計の成功の確度を
上げること。
機械設計者は、上述した鋳造品設計の基本に忠実な設計を行うことは是非必要
であるが、鋳造法・鋳物の材質・形状・大きさのみならず鋳造工場によっても、
鋳造品ごとにその最適設計が変わる可能性がある。従って(特に特殊鋳物や未
経験な設計分野の鋳物の場合には)鋳造技術担当者と緊密な連絡・打合せを行
い、有益な技術・意見は十分取りいれ、設計に反映するようにしなければなら
ない。
機械の部品としての鋳造品の活躍舞台が、溶接・鍛造・プレスなどの分野の発
達に押されて、近年かなり狭くなってしまった。そしてその結果として、鋳造
品設計技術をあまり重視しない、または熟知しない設計者が増加しているよう
に思われる。しかし鋳造品は、用途によっては他の追従を許さない長所を持っ
ているので、将来にわたって必須の機械構成部品であるだろう。従って機械設
計者は鋳造品設計の基本となる常識・技術・手法をマスタし、今後とも鋳造品
の特徴を十分に生かした優れた設計を行うことが必要であると思われる。
2−4、板金加工
板金加工は、一般に板厚精度の優れた市販薄板を切断・曲げ・溶接加工を施
して所望の部品形状に作り上げる物で、切削加工や鋳造成形加工と比較して軽量
化し易い点で優れている。また、切削加工より加工時間が短くコスト的に有利な
ことから自動車・家庭電化製品・オフィス機器などに多く採用されている。
量産製造を前提とした専用金型の費用は、鋳造用ダイカスト金型と比較して
遥かに安価であり、板金設計を上手く利用する技術を習得して頂きたい。
*せん断加工;
金属材料を切断する方法には、金鋸や金切り鋏で切る方法・加熱して溶解して
切る方法・水に大きな圧力を加えて材料の一部を破壊して切る方法や放電によっ
て材料を微細に取り除いて切る方法などがある。鋏(ハサミ)で切るときのような
力を加えて、材料を切る方法をせん断加工と言う。
せん断力による切断
金切りはさみで金属材料を切る方法を図1に示す。図のように刃物が
位置している場合に材料に加わる力をせん断力という。せん断とは、挟
んで切ることをいい、材料は引っ張って切るときに比べてせん断力で切
る場合のほうが小さな力で切ることができる性質がある。図2にせん断
された場合の切り口の断面を示す。
せん断する場合に図3のように刃と刃に角度をつけて切ると、材料を
小さな部分で切ることができるので加える力を小さくすることができ
る。この角度をシャー角といい、刃が直線の場合は板厚1〜3mmのとき
1°15'〜3°30',板厚4〜6mmのとき1°30'〜3°45'にするとよい切断となる。
せん断加工の種類と特徴
せん断加工は、せん断力を利用して必要な形状や寸法に切断する加工
法である。この加工法は、加工速度が大きく、同じ形状や寸法の製品の
大量生産に適用される。図4にせん断加工の種類を示す。
板材のせん断とせん断力
板材のせん断加工には、板材を支える工具(ダイス)と力を加える工
具(ポンチ)が必要である。ポンチとダイスのすきま(クリアランス)
がせん断面の良否に関係する。すきまの長さが適当であると精度のよい
せん断加工となる。図5にすきまの長さが適当である場合の切断のよう
すと切断の進み方を示す。
板材をせん断する場合に必要な最大せん断力Pは、次式で表せる。
P=tlk[N]
ここで、t :板厚[mm]、l :せん断輪郭長さ[mm] k :せん断抵抗
[MPa]である。
材料の種類によってせん断抵抗は異なるが、一般的には引張強さの80
〜90%の値である。
*曲 げ 加 工 ;
金属材料の多くは硬くても強度も大きいが、大きな力を加えると曲げた
り延ばしたりすることができる性質がある。このような性質を利用して、
薄い板材、パイプや棒材を曲げて製品を作る方法を曲げ加工という。
曲げによる加工
金属の板材を曲げて製品をつくる方法には、図1のように簡易な道具
類を利用する場合もある。自動車、いろいろな機械や日用品などの大量
生産を必要とする場合には、図2のように機械を使って加工する場合が
多い。
板材を曲げて加工するには、材料を固定してポンチとダイスで曲げる
折曲げと、必要とする形状をしたポンチとダイスを用いて曲げる型曲げ
がある。さらに、ポンチとダイスの代わりにロールを用いて曲げる送り
曲げやロール曲げがある。このほか、図2に示すように、丸穴や円盤の
縁をつくるフランジング、縁を丸めるカーリングや縁を巻き込んで結合
するシーミングがある。
材料の塑性と弾性
材料には、力を加えると折れたり曲がったり壊れたりする性質がある。
力を加えて変形させた後に、元の形に戻らないような性質を塑性とい
い、変形したのち力を取り除くと元の形に戻る性質を弾性という。粘土
を用いた製品はこの塑性を利用して成形され、ばねやゴムは元の形に戻
る性質が強いことを利用している。
鋼は力を加えて常温で曲げることができるが、より大きな力で引っ張
ると切ることもできる。どの場合でも、わずかであるが弾性によって元
の形に戻る性質を示す。図3の実線は、軟鉄を引っ張ったときの力(応
力)と(ひずみ)の関係を示したものである。
E点以下の力の範囲では、軟鋼は伸びて変形するが、力を取り除くと元
の長さに戻る。この範囲を弾性域といい、E点を弾性限度という。この範
囲では、OEは直線となり力と伸びが比例しているため、点Eを比例限度
とも呼ぶ。弾性域を越えて力を加え続けて降伏点を過ぎると、軟鋼は力
を取り除いても元の形に戻らなくなって変形したままになり、さらに力
を加え続けると切断する。軟鋼に力を加えて変形したままの形を保たせ
るためには、弾性域以上の力が必要となる。
塑性域を越えてP点になってから力を取り除くと、今までに伸びてい
た長さから弾性のひずみ分P2が減ってP1のひずみとなる。これを弾性
ひずみという。元に戻らないで残るひずみが塑性ひずみP1である。
図4(a)のように薄い板材を曲げるとわずかに点線のように戻る。こ
れは弾性ひずみにあたる分だけ戻るためで、スプリングバックという。
製品の製作にあたっては、あらかじめこのスプリングバック分を考えて
製作したり、図4(b)のようなくふうをして製作する。
* 絞 り 加 工 ;
清涼飲料水の缶は、板材をポンチとダイスで継目のない底の深い円筒
形にしてつくられる。このような加工方法を絞り加工という。清涼飲料
水の缶のほかに自動車部品や日用品など大量生産される製品の製作に適
用される。
◎ アルミニウム缶の加工
清涼飲料水用に利用されるアルミニウム缶に例を図1に示す。このよ
うなアルミニウム缶は、図2のようにアルミニウムの板材からせん断加
工で円板をつくり、ポンチとダイスで絞り加工を行ったのち、深さを増
すために再絞り加工する.その後、さらに深く成形するために厚さを薄
くする加工を行う。このような加工をしごき加工といい、加工硬化によ
って硬さが増して丈夫で表面光沢のある缶ができる。
アルミニウム缶はDI(drawn and ironed)缶とよばれ、ふたと容器部
分からなり、多い場合で毎分1000個程度つくられるので、図3のように
上記の加工を連続的に行って効率よくつくる工夫がされている。このよ
うな高速の加工を行うために、高品質のアルミニウム合金が使われる。
絞り限度と絞り率
絞り加工では、どのような深さや太さの缶もつくられるわけではなく、
絞ってつくる深さや太さに限度がある。材料が壊れずに必要な形状に加
工できる限度の割合を絞り率mといい、加工される製品の直径dと円
板材(ブランク)に直径Dとの割合で表される。
絞り加工の限度の割合を限界絞り率といい、金属では0.5〜0.6程度で
ある。これは板材の厚さや工具との摩擦、工具の形状や寸法が影響す
る。絞り率が大きく、限界絞り率以上に絞って加工する場合は、一度絞
ってつくったものを再度絞って加工する。底の深い缶の製作に適用され
る。
厚板t[mm]、直径D[mm]のブランクから深さh[mm]、直径d
[mm]の円筒容器をつくるときに絞りに必要な力は、次にように求める
ことができる。製作する円筒容器の表面積は、ブランクの面積が等しい
から
となる。したがってDは、次式となる。
必要となるポンチに加える力P[N]は、材料の引張強さσa[MPa]、
絞り率に関係する係数をC1とすると、次の式によって決まる。
P=πd+C1σa[N]
C1はおよそ次のような値を用いる。
へら絞り
金属か木の型に材料板を取り付けて、これを高速(3000rpm程度)で
回転させた状態で、図4のようにローラあるいはへらを押し付けて、型
に合わせて成形する方法をへら絞り(スピニング)という。現在ではロ
ケットの先端やモータ外筒、原子炉燃料の高速遠心分離装置の先端機器
の部品製作などに適用されているが、筒形をした容器の製作に長い歴史
をもった加工法である。製作にはへらを手で操作しながら行う方法が多
く、少量生産品に有利である。
*NCタレットパンチ・NCベンダー加工;
NCタレットパンチ加工は、標準金型を組合わせて高速で高精度な加工が可能であることから
機械設計者にとって非常に便利な加工手段と言える。部品毎に専用の金型を準備する必
要がないため多種少量生産に向いており、且つ機械の軽量化・低コスト化を実現できる
ので、是非上手くこれを活用する設計手法を学んで頂きたい。
下図は最新のパンチ&フォーミングセンターPFX−357(アマダ製)を紹介する。
例えば、画面成形加工。得意技をいくつもものにした異能マシン。
加工現場のさまざまな課題、多様なニーズにお応えし、
新しいシートメタルの加工スタイルを築いたPFX-357
穴あけ・各種成形・タッピング・曲げ、1台で4役をこなす多才なマシンです。
■サンプル加工例
材 質:ボンデ鋼板
板 厚:1.2mm
ヒット数:中穴加工/120ヒット
外形切断/86ヒット
下向きバーリング/6ヒット
タッピング/6ヒット(タッピング金型使用)
下向きブリッジ/3ヒット
オフセット/80ヒット(ニブリングモード)
曲 げ/10ヒット
加工時間:4分54秒(製品1個当り)
画面成形加工
上向き20mm・下向き10mmの成形加工が可能。しかも、フォーミング
シリンダーにより、高精度な成形ができます。
作業工程の大幅短縮・生産性の大幅拡大
穴あけ、成形、タッピング、曲げをワンクランプでこなし、作業工
程・作業時間を短縮。生産性を大幅に高めました。
どんな形がお望みですか。どんな形も、美しく精巧に。
NCTが選ばれる理由、
タレットディスク
独自のレーザー焼き入れ技術により、
優れた耐摩耗性を実現した高剛性タレットは、
高速・高精度加工を支え・回転する、NCTのシンボルです。
| 金型をしっかりホールドする
120mmのタレット厚※ 多種多様な金型の組合せにより、さまざまな 形状を高速・高精度・低コストで加工する NCT。そのシンボルといえるものがタレッ トディスクです。そして、多数の金型を搭載 しながら高速で回転し、強力なプレス加圧を 支えるタレットには、その構造上かなりの ”ムリ”が強いられます。たとえば、負い抜 きやニブリング加工の場合、金型には下図の ようにたいへん強いスラスト(側圧)がかか
ります。これはややもするとタレットをも動 かしてしまうくらいの怪力ですが、NCTの タレットは高剛性のフレームにがっちり支え られていますので、タレットの変位は限り無 く0に近く、金型のジャミングはありません。 しかし、いくらタブレットが変位しなくとも、 金型がタブレットの中でこじれてしまったら、 やはりジャミングしてしまうでしょう。 そこで、NCTはタレットの厚さを120mm に設計。金型をホールドしている面積(つま り摺動面積)がたいへん広いため、抜群のホー ルドで金型をしっかり保持し、金型のこじ れを防ぎます。 ※ロング金型用Hタイプタレットの場合です。 NCTにはオプションでショート金型用のLタイプタレット もご用意しています。 レーザー焼き入れによる、
|
を硬くすればするほどよいのですが、すると
今度は金型のガイド(タレットと直接接触し 摺動している部分)が極端に摩耗してしまいま す。こうした矛盾を解決するため、実験・測 定を繰り返した結果、タレット内壁の摩耗は 金型のスラストの影響を直接受ける2つの ポイントに集中していることがわかりました。 そこで、この2つのポイントにレーザー光で スプライン曲線状に焼き入れ処理を施すこと でこの部分を強化。その結果、タレットの摩 耗は従来に比べ約1/3から1/5に減少しま した(当社比)。このように、金型とタレッ ト双方とも耐摩耗性を向上させ、長寿命化を 実現した高剛性タレットは、まさに進化する NCTの象徴です。 ※特許出願中 昭62−173775 ※1992年4月よりHタイプタレット搭載の全NCTに採用。
高生産性を実現する、 大容量タレット タレットに搭載する金型は、数が多いほど金 型交換などの段取り時間が減少し、実加工時 間が増え、生産性が向上します。(下図参照)。 ![]() |
アマダの大容量タレットは、長年の経験と実
績から割り出した2つのオートインデック ス※(オプション)を含むHタイプ58ステー ションの最適なレイアウトです。 ※特許 第1562273号
また、アマダのタレットは独自の3トラッ ク方式により、使用頻度の高い金型(1/2" は3本、11/4は2本)を、タレットを回転さ せることなく、ストライカーの動きのみで 自動選択し加工します(選択時間は0.3秒と 瞬時)。これにより、金型選択の超スピード 化を実現するとともに、より小さな径で多数 の金型を搭載することを可能としています。 ![]() |


金型と打ち抜きメカニズム
緻密な設計から生まれた金型と、
ムダな動きのない打ち抜きメカニズムは、
精度・品質ともに優れた、パンチングの基本です。
| スプリング復帰方式による
打ち抜きメカニズム ストライカーが金型をパンチしてワークを打 ち抜いてゆく―。 一見、単純に思えるこの 動きも、実はそこに複雑な工程があることは 残念ながらあまり知られていないようです。 下記の図は、NCTの打ち抜き工程をコマ送 りにしたものです。ご覧いただきながら、以 下、その工程をご説明しますと、 (1)まず、ストライカーがパンチヘッドをたた きます。 (2)すると、タレットに装着されたリフタース プリングが縮み、金型のストリッパープレー ト(パンチボディ)がワークをしっかり押 さえます。 (3)次に金型のストリッピング・スプリングが 縮み、ワークをしっかりホールドした後に、 |
パンチがワークを打ち抜きます。
(4)その後、バネの力の強いストリッピング・ス プリングが先に戻り、ワークからパンチを 引き抜きます。この時、ワークはストリッパー プレートにしっかり押さえられたままです。 (5)そして、リフタースプリングが戻るととも に、ストリッパープレートもタレット内に 戻ります。 こうした一連の工程を、全くムダのない動き で、ほんの一瞬の間に行うのが、スプリング 復帰方式と呼ばれる、NCTの打ち抜き工程 です。 薄板から厚板まで、 安定した高品質加工を実現 こうした打ち抜き工程の中で、特に注目して いただきたいのが、つねに面でワークをしっ かり押さえている、ストリッパープレート |
の働きです。これにより、
●打ち抜き時にワークがずれにくい。
といった、数々の優れたメリットをもたらし
|
| 厳密な生産管理体制から
生まれるNCT金型 NCTの金型づくりは、金属加工の総合エン ジニアリングとして長年蓄積してきた豊富な 技術と経験・ノウハウをバックボーンとする 徹底した金属特性の分析から始まります。 そして、綿密な設計過程、最新のマザーマシン による製造工程を経て、厳密な品質チェック を受けたのち出荷されます。そのすべてが CIMにより生産管理されており、標準品か ら特注品まで、お客様のニーズにスピーディー に応えるシステムを整えています。
|
カス上がりを減らし、超寿命化を実現する、
エアブロー装置※[オプション] エアブロー方式とは、装置から供給されたオ いるミスとを、ストラ一カーを通じて、金型 のパンチボディのエア穴からガイド下面やパ ンチボディ摺動部に噴出するものです。これ により、金型とタレットの潤滑、刃先の潤滑・ 冷却を行い、金型の長寿命化を実現します。 また、追い抜きやニブリング加工時のカス上 がりを極力少なくし、高品質加工をより確か なものにします。 ※実用新案登録 第1946274号 第1975455号
|
クランプと材料移動
ワークを常に平行に、高速移動させる
上下動・柔構造クランクと位置決め機構は、
スピードと精度に挑むNCTの原動力です。
| バスライン、成形加工、
クランプについて。 たえず思いワーク(板厚4.5mmの4’×8’ 材なら約100kg)を高速で移動させながら 加工するタレットパンチプレスにとって、パ スラインは重要な要素です。というのも、パ スラインの水平が出ていなければ、ワークは ばたつき、精度不良・傷の発生・騒音の原因 となるからです。 スラインは、(1) テーブル上のフリーベア (2) ダイ(金型)(3) タレット内のフリーベア (4)リ ポベース、以上の4つにより構成されてい ますが、このうち問題となるのが (2) のダ イで、とくに上向き成形加工の場合です(下 図参照)。
材料の表面に立ち上がる上向き成形のダイは、 その立ち上がり分(5mmの立ち上げなら 5mm)だけ、他の標準ダイより高くなりま す。従って、タレットの中に成形ダイが入っ ている場合、パスラインは材料とダイがぶつ からないように、はじめからその分だけ高く 設定する必要があり、通常、クランプを上向 きに調整・固定します。しかし、この方法だ と、加工点がクランプに近づけば近づくほど、 図のように材料の腰折れ現象が発生してしま います。 ![]() |
これは、成形でなく標準のダイでも同じです
(パスラインが高く固定されているため)。 このような材料の腰折れ現象を少なくしたのが、 アマダの特許・上下移動柔構造クランプです。 ワークの腰折れを解消する、 上下移動・柔構造クランプ※ アマダNCTのクランクは、ワークの動き に追従して、上下に動く柔構造になっている ため、成形金型で加工する場合も、ダイの立 ち上り高さに合わせてクランプも上昇し、加 工完了と同時に通常のパスラインに戻ります。 従って、つねに水平なパスラインを維持でき るため、高精度・高品質な加工を実現してい ます。 ※実用新案登録 第1774861号
また、クランク自体の加工・組付け制度も、 高制度に仕上げられており、ワークの高速移 動とともに高精度な位置決めを可能としてい ます。 さらにオプションで、厚板・大物加工向けのパ ワフルな油圧式クランクもご用意しています。 ![]() |
高精度加工を支える、
その他の構造・機能 高速・高精度なワークの移動を支える
|
FBDV用に高精度金型シリーズをラインアップしました。
高精度ベンディングマシンFBDVの機能を最大限に活用していただくため、高精度金型の
ご使用をお奨めします。アイテムは、84°〜90°のパンチ(先端0.2Rおよび0.6R)、2Vダイ、
1Vダイを基本としています。ぜひご使用ください。
※ご注文については特型扱いとなりますので、弊社受注後10日ほどで発送となります。
| [1]精度・・・・通し研磨により、高さのバラツキをなくしました(最大Lサイズ×5本まで)。
[2]硬度・・・・入念な焼入れ処理により、”HRC47±2”の硬度です。 [3]材質・・・・スタンダードツールに準ずる特殊剛を使用しています。 [4]硬度・・・・従来の金型と識別しやすいマーキングおよび通し研磨順の刻印が入っています。 |
プレスブレーキ用金型は、サイズ・種類とも広範囲にわたって
いつでもご用立てすることができます。
*板金加工部品設計上の注意事項;
(1)板金曲げRの最小値について。
板金材料を曲げた時、曲げの外側には引張り応力が発生し、内側には圧縮応力が
働く。材料の弾性限界を越えて残留歪みが生じるまで力を加えて始めて曲げ加工
が可能となる訳だが、曲げRを極端に小さくすると板の外側で限界応力を越えて
亀裂が発生する。 一般に板厚寸法が最小曲げRと言われており、R=0.5tまで
加工が可能ではあるが外部に亀裂を生じる恐れがあり、あまり推奨できない。
最小曲げR = 板厚寸法
(2)打ち抜き加工時の抜きだれ。
穴を打ち抜き加工したとき、ポンチ側に「抜きだれ」が生じ、ダイ側に「かえり」
(バリ)が付く。これらはポンチとダイ間のクリアランスが大きく影響するもの
で、一般にクリアランスの2.5倍の丸み(抜きだれ)が付くと言われている。
また、「かえり」もこのクリアランスに比例して大きくなるが、「ファインブラン
キング」と呼ばれる特殊金型ではこの「かえり」が殆ど0に近い物もある。
抜きだれのRは?
下限値 R=0.25×板厚
実用値 R=0.4〜0.5×板厚
角部のRは?
実用値 R=0.5×板厚
(3)突起・切り欠きの限界寸法は。
突起・切り欠きのある部品において、その形状は金型強度からその限界がある。
切り欠き溝幅の最小値は?
実用値 W=2×板厚 が最大
切り欠き溝長さは?
実用値 L=5×切り欠き溝幅 が最大
(4)穴と穴との間隔(最小値)は?
丸穴の場合の実用値 =2×板厚 (0.8min)
角穴の場合の実用値 =2×板厚 (0.8min)
(5)最小打ち抜き穴径は?
全ての場合に当てはまらないが、打ち抜き可能な最小穴径は
(6)スリット穴の形状は?
スリット穴の最小溝幅 = 1.7×板厚 が最小
スリット穴の最小溝長さ= 60×板厚 が最小
(7)穴と曲げRの干渉しない限界は?
穴加工後に曲げ加工を行う場合
穴端部から曲げR止りまでの寸法=1.5×板厚 が最小限界
(8)長円加工後に曲げ加工をする時の寸法は?
曲げフランジの長さが25mm以下の場合
穴端部からの寸法=R止り+(2×板厚) が最小
曲げフランジの長さが25〜50mm以下の場合
穴端部からの寸法=R止り+(2.5×板厚) が最小
曲げフランジの長さが50mm以上の場合
穴端部からの寸法=R止り+(2.5〜3.5×板厚) が最小
(9)円筒製品の底に穴が開いている時は?
製品の底にかかるRと穴の間隔は、最低板厚の2倍以上空いていること
(10)板厚のわりに幅の狭い製品は?
ダレが大きくなるので、幅は板厚の3倍以上必要である。
(11)NCタレットパンチ加工の丸穴精度は一般的にH8級位が普通である。
(12)NCタレットパンチ加工の丸穴ピッチ精度は100mm間で±0.1mm位が普通である。
2−5、研 削 加 工
研削によって工作物の表面をきれいに制度よく仕上げるためには、工
作物の形状、材質によって、加工に用いる砥石の種類や砥粒、結合材の
種類、砥石の構成要素、さらに、仕上げ面精度など研削条件を適切に選
択することが大切である。
◎ 研 削 砥 石
砥石の表面を拡大してみると、砥粒が重なり合って、穴(気孔)が無
数にある。その状態を図1に示す。砥石は、砥粒と結合材、気孔から成
り立っている。砥粒は、硬く鋭い角をもち、工作物の表面から切りくず
をつくる切れ刃の働きをする。結合材は、砥粒と砥粒を結合して保持す
る働きをする。気孔は、切りくずの排除や冷却の循環を助ける働きを
する。これらを砥石の三要素という。
砥石の性質を左右する構成要素として、砥粒の種類と粒度、結合材の
種類と結合度および組織があり、加工する工作物の材質により、これら
を適切に選択する。この五つの因子を砥石の性質を決める五大要素とい
う。
砥石のいろいろ 砥石は、強靭で摩耗しにくく、耐熱性に優れて化
学的に安定な性質をもつ材料である。砥粒には、溶融アルミナ砥粒と、
炭化けい素砥粒、ダイヤモンドが使われる。これらの人造砥粒の種類と
一般的な用途を表1に示す。
砥石の大きさを表すのに粒度を用い、8番から8000番までJISで定
められ、8番が最も粗く、8000番が最も細かい。研削砥石に利用される
粒度は、24〜220番である。とい
結合材のいろいろ 砥粒同士を結合させて砥石の形にする結合材に
は、粘土や長石を焼き固めたビトリファイド結合材と、熱硬化性樹脂の粉
末で固めたレジノイド結合材、さらに、銅やニッケルなどの金属を用い、
粉末成形法あるいは電鋳法により砥石を結合させたメタル結合材がある。
砥石から砥竜が脱落する度合を結合度といい、AからZまでの26段
階に区別され、Aが最も軟らかく、Zが最も硬い。一般にGからPまで
の範囲が多く使われる。
砥石の単位面積当りに含まれる砥粒の粗密を表すのが組織である。組
織が粗い砥石は、軟らかくねばい工作物や切りこみの大きい研削に用いら
れる。組織が密な砥石は、硬くてもろい工作物や仕上げの研削に用いら
れる。組織の種類は0〜14に区別され、0が最も密で、14が最も粗く、
5〜7の範囲が多く用いられる。
砥石の選択 砥石を選択する条件は、研削方式や工作物の形状によ
り砥石の形状や縁形を決め、さらに工作物の形状や材質、仕上げ面の程
度により、砥粒の種類や粒度、結合度そして組織などを選択する。
一般に工作物の材質が硬いほど、結合度は軟らかくする。また、仕上
げ面の粗さが小さいほど、粒度、組織を細かくする。
図2に主に使われる砥石の形状と縁形を示す。
◎ 研削の原理
研削加工では、工作物や砥石の大きさ、研削時の砥石周速度、切込み
深さ、送り速度が、加工能率や仕上げ面の精度に大きく影響を与える。
仕上げ面の精度 研削加工では、切り込みはわずかであり、工作物の
速度より礎石の速度のほうが著しく大きいので、切りくずは非常に小さ
く図3のABCDのような形になる。ACが切りくずの長さ、BDが切込
み深さである。
仕上面の粗さは、図4に示すように、砥石表面の砥粒aと砥粒bの
間隔がフライスの刃のように等間隔でないため、切りくずの厚さや長さ
は不均一となり、切込み深さは一定にならない。さらに、砥粒の高さが
一定でないため、砥粒の工作物にくい込む深さが不ぞろいとなる。その
ため、微小な凹凸をした仕上げ面となり、仕上げ面粗さが不均一となる。
また、仕上げ面粗さは、砥粒の間隔や切込み深さのほかに、砥粒の粒度
や結合度、組織、砥石の周速度などの研削条件が影響する。
砥石加工における工作物の周速度は20m/min、工作物を砥石の周速
度の比は1/100が標準であり、砥石の周速度が遅いと、砥石の損耗が大
きく、速すぎると切れ味が悪くなる。また、切込みの標準値を表2に示す。
研削抵抗 研削抵抗は、旋削のバイトに発生する抵抗と同様に、砥
石の作用面に対して、接線方向に作用する主分力、垂直方向に作用する
背分力、回転軸方向にさようする送り分力とからなる。
しかし、砥石加工では、バイトのよる切削の場合と異なり、図5に示
すように背分力が大きくなる。これは、砥粒のすくい角が大きな負角で
あり、切れ刃の進む向きに切りくずが排出されるためである。
研削抵抗は、砥石の切込み深さや工作物の速度、送り速度が大きくな
ると増加し、砥積の結合度が高いほど増大する。研削抵抗が大きすぎる
と、発生する研削熱が増加し、工作物の温度が上昇する。
研削熱は、工作物表面と砥粒の間で発生する摩擦熱と工作物表面が切
りくずになるときの塑性変形時に生ずる熱である。発生する熱は、砥粒
研削点で約2000℃の温度に達し、工作物や砥石、切りくず、研削液、空
気に伝わる。
研削時に発生する熱は、工作物の制度を悪くしたり、工作物表面の結
晶を変化させたり、酸化して黒ずむ研削焼けを起こしたり、さらに、表
面に網目状のき裂を生ずる研削割れを起こす原因になる。そこで、研削
液を多量にかけて、工作物温度を低下させる。
研削液は、研削部の温度を下げる働きをするばかりでなく、加熱され
た砥粒を急冷することにより、研削面が摩耗した砥粒を脱落させて、新
しい切れ刃を生じさせる働きもする。
また、研削液は切れ刃と工作物の接触面に侵入して、摩擦を減少させ
たり、切りくずが切れ刃に溶着するのを防ぐ働きをする。さらに、切り
くずや脱落した砥粒を洗い流し、良好な仕上げ面を得る働きをする。
自生作用 研削が進むに従い、切れ刃の表面は摩耗して平らになり、
砥粒に作用する力が増大する。砥粒に作用する力が大きくなると、砥粒
が砕けたり、脱落して新しい鋭利な切れ刃が生ずる。このような現象を
切れ刃の自生作用という。この、自生作用が適度に起こり、切れ味が持
続する状態を砥石の正常状態をいい、研削加工を行ううえで、砥石の選
択が適切に行われていることがわかる。
砥石の選択が適切でないと、図6に示すように、目つぶれ、目づまり、
目こぼれが起こる。目つぶれは、砥粒を支えている結合材の保持力が強
く、砥粒の破砕や脱落が起こらないまま砥粒が摩耗してしまい、検索焼
けの原因となる。目づまりは、軟金属の研削で切りくずが砥石表面に付
着する現象で、びびりの原因となる。また、目こぼれは、砥石の結合度
が低すぎて、砥粒の脱落が盛んに起こり、砥石の摩耗が激しい状態をい
う。なお、切れ味が低下したり、砥石表面の形状が崩れたときは、ダイ
ヤモンドドレッサやクラッシャロールを用いて砥石の表面を修正する。
◎ 超 仕 上 げ
超仕上げは、軸や軸受、ベアリングのレース面など、特に耐摩耗性が
必要な機械部品の表面仕上げを行う加工方法で、専用の機械として超仕
上げ盤が使われる。
超仕上げは、粒度の細かい結合度の比較的小さい砥石を、回転してい
る工作物の表面に小さい圧力で押し付け、工作物の回転方向と直角に、
小さい振動と送り運動を与えて、工作物表面を少しずつ削りながら、表
面を鏡面仕上げする加工法である。
超仕上げは、砥石の振動と送り運動を与えるため、図3に示すように、
砥粒が工作物の表面に正弦波を描くように動き、切れ刃の向きが常に連
続して変化するので、けれ刃の自生作用はホーニングよりも促進される
ため、砥粒の大きさが細かく、砥石の圧力や速度が低くても、仕上げに
要する時間は短く、仕上げ面の粗さも小さくすることができる。
超仕上げを行う工作物は、ホーニング同様に工作精度のよい前加工を
必要とするため、精密切削加工や研削加工が施されたものが使われる。
超仕上げされた面の加工模様は、曲線を描いたきずとホーニングと同
様の交差したきずとが観察される。加工が進むにつれて砥石を目づまり
状態になり、面が滑らかな鏡面仕上げとなってくる。
超仕上げでは、通常、工作物の周速度は5〜30m/min、砥石の振幅は
1〜4mm、砥石の振動数は16〜35Hz、砥石圧力は0.1〜0.2MPa、交差
角は40°〜60°が用いられる。
* 研削加工で設計上注意すべき事柄;
近年、技術の急速な発達により、仕上げ面や寸法精度の高い部品を必要とする
製品が増えてきている。例えばコンピュータ用ハードディスクや半導体関連では
0.1μm以上の形状精度や寸法精度・0.01μm以上の仕上げ面精度が要求される
場合も珍しくない。この様な高精度を得るためには、加工機械に使用する材料
を熱膨張率の低い特殊材料や、剛性の高い材料を使用したり、機械の微小な振
動を防ぐために玉軸受けに代わって流体を利用する静圧軸受けを使う工夫など
が施されている。この様な工夫も必要なことは言うまでもないが、被加工物の
設計形状が更に重要であり、下記の様な点に注意すべきである。
(1) 研削加工では、比較的大きな砥石で加工する(特に平坦度を出すには)ため、
加工面より出っ張る部分がある形状は避けるべきだ。
(2) 平坦面を加工する時、被加工物を安定に固定することが大変重要であり、
確実に保持できる形状(加工時の剛性が問題)を設計上考慮しておくこと。
(3) 一般に研削加工で仕上げる研削代は0.1〜0.2mm位が普通であり、加工代の
割に加工時間が長く、段取り時間をも考慮すると非常に高コストな部品とな
る、従って高付加価値のある重要部品以外でむやみに使用するべきでない。
2−6、放電・レーザ加工
□ ポイント 電極と工作物の間でアーク放電をさせ、工作物の表面を微小に除去し
ながら加工を行う方法を放電加工(electrical
discharge machining:
EDM)という。
主として、プラスチック製品などをつくる金型を加工しるために用い
られる。金型に用いられる金属は、硬くて強く、加工しにくい材料が普
通である。この方法は、工作物の材質が導電性であれば、加工が可能で
ある。
□ かいせつ ◎ 放電のしくみ
工作物と電極を絶縁性の加工液の中に入れて、数μmから数十μmの
アーク放電
小さなすきまを一定に保ちながら電圧をかけると、両者間でアーク放電
が発生する。これにより工作物は熱せられ、溶けたり、蒸発したりして、
電極と同じ形に除去される。
その時加工液も熱せられ、ガス化し、工作物が溶けた加工くずを吹
き飛ばす働きをする。その間隔を一定に保ち、連続してアーク放電が発生す
るようにサーボ気孔により送りを制御している。
◎ 放 電 加 工
放電加工 放電加工は、図1に示すように、製品と逆の形にした加工電極を工作
転 写 物に近づけ転写する加工で、形彫り加工とよばれる。
形彫り加工 この方式の電極は、導電性の銅や黒鉛(グラファイト)を用いる。加
工液は、電気の流れにくい灯油や絶縁性の水(純水)を用いる。工作物
や電極は、NC制御により一定した移動や送りとなるよう制御し、常に電
極と工作物の加工間げきを一定に保つようにしている。
◎ ワイヤ放電加工
ワイヤ放電加工(wire
electrical discharge machining:WEDM)
は、図2に示すように、細い黄銅のワイヤを用い、そのワイヤを工作物
に近づけ放電させ、工作物を固定したテーブルをNC制御することで必
要な形に工作物をくり抜き加工する方法である。
この方法の電極は、負とさ0.02〜0.3mmの同や黄銅のワイヤを用い、加
工液は、水を純水に近い形に処理して用いている。
ワイヤ放電加工機に用いるワイヤは、非常に細いので、切断すること
がある。そのため、ワイヤを自動的に結線する自動結線装置が取り付け
られ、加工能率を上げている。
◎ 放電加工の長所・短所
放電加工の長所
(1)導電性であれば、金型用の硬い金属も容易に加工できる。
(2)NC制御により、複雑な形状の加工ができ、加工精度が高い。
(3)加工時に工作物に加わる力が小さく、変形、ひずみが生じない。
(4)無人化・自動化がしやすく、長時間運転が可能である。
放電加工の短所
(1)機械加工などと比べると、加工速度が遅い。
(2)電極を消耗する。
* 電子ビーム加工;
□ ポイント レーザ光のもつエネルギーを工作物の表面に集束させ、工作物を局部
的に加熱し、切断、穴あけ、溶接、表面処理などを行う加工をレーザビ
ーム加工(laser beam machining)という。
□ かいせつ ◎
レーザとは
レーザ レーザ(laser)とは、誘導放射による光増幅(light
amplification by
stimulated emission of radiation)の頭文字からできた言葉である。
普通の光は、位相や振幅が不規則で、いろいろな振動数が入り混じった
コヒーレント
状態の波である。これに対しレーザー光は、コヒーレント(coherent)と
よばれ、波長が一定で、位相がそろい、指向性に優れ、単色性が高い性
質がある。レーザは、このような特徴を生かし、精密な測定や光通信に
早くから利用されてきた。
◎
レーザの発生
図1に示すように、炭酸ガスやアルゴンガスなどの気体レーザ物質を
放電管
封入した放電管で、放電させると光が発生する。この光が反射鏡を往復
する間にレーザー物質に入射し、光は増幅され、強い光となって半透明な
反射鏡側から放出される。
レーザ光
これがレーザ光であり、レーザから放出される光エネルギーをレーザ
ビーム(laser beam)という。
ルビー、YAG、ガラスなどの固体レーザ物質では、外部から、キセノ
ン閃光ランプなどの光を当てることにより、レーザ光を取り出してい
る。
◎
レーザの種類
炭酸ガスレーザ
炭酸ガスレーザ 炭酸ガスレーザは、10.63μmの波長で発振し、出
力が大きい。炭酸ガスレーザビームをレンズで集束させ、金属やセラミ
ックス、布などの切断や、機械部品の溶接に用いる。
YAGレーザ YAGレーザ YAGレーザは、1.065μmの波長で発振する.YAG
は、イットリウム(yttrium)・アルミニウム(aluminium)・ガーネット
(garnet)の単結晶からできている。このレーザは、炭酸ガスレーザに比
べて波長が短く、レーザスポットを10μm以下に小さく絞ることができ
る。
エキシマーザ エキシマーザ エキシマーザは、触媒に塩化キセノンなどを使
って、繰り返しパルス放電させるレーザで、波長が約0.2μm(紫外線)
と短く、高精度の微細加工が可能である。
◎
レーザによる加工
材料にレーザが当たると、温度上昇、加熱、蒸発、融解などが起き、
銅版などの金属はもちろん、プラスチックや布などさまざまな材料の切
断、溶接、穴あけなどの加工に利用されている。
レーザスポット レーザスポットは、直径が10μm以下から0.2mmほどになり、高密
度のエネルギーが得られ、高融点材料の高精度、超微細加工が可能であ
る。また、テーブルをNC制御することで、複雑な形状の加工ができ、
非接触加工のため出力の制御がしやすく、自動化システムに適している。
レーザ加工機は図2に示すような構造で、レーザ発振装置、ミラー、
NC装置により制御されるXYテーブルから構成されている。
2−7、溶接加工
溶接加工の種類には、「ガス溶接」「アーク溶接」「スポット溶接」「ガスシールド
アーク溶接(アルミニウムの溶接もこの一種)」「ろう接」など各種の方法があるが、
ここでは、初級編で説明しなかった手法を説明する。
* ガスシールドアーク溶接;
ガスの雰囲気の中でアークを発生させて溶接を行う方法にMIG溶接
(metal inert gas arc weleing)がある(図3)。
これは、電極に溶極性の溶接棒やワイヤを用いる方法であり、雰囲気
のガスとしてアルゴンガスや
二酸化炭素ガスを用いる。二
酸化炭素ガスを用いる溶接が
炭酸ガスアーク溶接である。
二酸化炭素ガスは低価格であ
るので、鋼の溶接に利用され
る。このように、アークを発
生させる雰囲気としてガスを
利用する溶接をガスシールド
アーク溶接という。
* アルミニウムの溶接;
□ ポイント アルミニウムの融点は660℃であり、金属の中でも融点の低いほうで
ある。しかし、溶接で接合する場合には、熱伝導性がよく空気中の酸素
と反応して融点の高い酸化物を生成しやすいなどの性質のため、アルゴ
ンやヘルウムガスの雰囲気中で溶接する方法が用いられる。
□ かいせつ ◎
アルミニウムの溶接
アルミニウムの溶接は、主としてアーク溶接によって行われ、電極に
アーク はタングステンが用いられる非溶極形のアーク溶接である。アークは、
アルゴンガスの雰囲気の中で発生させて、アルミニウムの溶接棒で溶接
TIG 溶接 する。この方法をTIG溶接(tungusten
inert gas arc welding)という。
不活性ガス アルゴンガスは、不活性ガス(inert
gas)であり、他の物質と反応しない
性質を利用している。タングステンは3387℃と高い融点であるが、溶接
トーチは水で冷却する。図1にTIG溶接の方法を示す。
銅も溶接しにくい金属である。銅の溶接でもアルミニウムと同じ方法
が適用される。銅の融点は1084℃であり、鋼に比べるとかなり低い。こ
れラの金属が溶接しにくい理由の1つが、どちらも熱伝導性が非常によ
く、熱の拡散が速いため金属の溶ける温度に達しにくいことである。ア
ルミニウムは軟鋼の5倍以上、銅は8倍以上の熱伝導性がある。
◎ アルミニウムの溶接の特徴
アルミニウムの溶接では、溶解したアルミニウムが酸素と反応して溶
接部表面に融点の高い酸化アルミニウムの皮膜をつくって溶接が困難と
なる。この皮膜をイオンと電子の爆撃作用で破壊してきれいな表面で溶
接を行う必要がある。このため図2のように直流を利用して、正極性
や逆極性に電極と母材を接続して溶接部の溶込みを変えて適切な溶接が
できるようにする。図2に正極性と逆極性の接続と各極性の溶込みを示
す。それぞれの特徴によって溶接方法が選択されるが、交流が中間の溶
込みであるので用途が広い。
直流正極性DCSP(direct
current straight polarity)
直流逆極性DCRP(direct
current reverse polarity)
* ろ う接;
□ ポイント 溶接は、溶接棒や接合する金属を溶融して接合する方法があるが、は
んだ付けは接合する金属は溶融させず、はんだだけが溶けて凝固するこ
とで接合できる。このような接合の場合、はんだをろう材という。接合
する金属を溶融させずにろう材を溶かして接合する方法をろう接とい
う。
□ かいせつ ◎
ろ う 接
ろう付け ろう接は、ろう付けともよばれ、はんだ付けは最も身近なろう接の一つ
はんだ付け である。ろう接は、接合する金属より低い温度で溶融するろう材を過熱
して溶かし、接合する金属に密着させて接合できる。したがって、密着
させて接合するために、金属の表面のほこりや油や酸化物の皮膜などを
取り除く必要がある。ほこりや油などは布でふいたりサンドペーパーで
フラックス 磨いて取り除き、酸化物の皮膜はフラックスで取り除く。きれいになっ
た金属表面にろう材を溶かして密着させると、ろう材と接合する金属の間
に各金属の原子の移動や侵入が起こってより強く接合する(図1)。
軟ろう ろう接では、ろう材の溶ける温度によって軟ろうと硬ろうに分けられ
硬ろう る。軟ろうは450℃以下の比較的低い温度で溶けるろうをいい、それ以上
の温度で溶けるろうを硬ろうという。はんだは鉛(Pb)とすず(Sn)の
合金で、180〜250℃で溶けるはんだがよく用いられる。硬ろうは、融点
が高いので酸素とアセチレンガスによってろう接される場合、ろうの種
類によって電熱やアーク熱などを用いる場合もある。
□ 関連事項 ◎ ぬれとろう接
ぬ れ ろう材と接合する金属(母材)が密着している状態は、ぬれ(wetting)
接触角 でしることができる。図2のように接触角θが小さい場合は、溶けたろ
うが母材をぬらすといい、θが鈍角になった場合はぬれないという。
このぬれがよくなるように母材の表面をきれいにする必要がある。ぬれ
のようすは、ろう材の種類によって多少異なる(図3)。
◎
ろう材の種類と用途
はんだは融点が低いため、はんだごてによって容易に作業が行える利
点があるが、機械的強度が低いので大きな力のかからない場合や電気伝
導を目的にする場合に用いられる。黄銅ろうは、銅(Cu)と亜鉛(Zn)の合
金で融点が約900℃と高いが、亜鉛が30%〜40%の合金が機械的強度が大
きいために鉄鋼のろう接に用いられ、亜鉛が40〜50%のろうは黄銅製品
のろう接に用いられる。その他のろう材の例を表1に示す。
◎
フラックスの種類
フラックスはろうの融点より低い温度で溶けて、空気と触れるのを避
けたり金属酸化物と反応してスラグとなってろう接部分を保護する働き
をする。はんだには松やにが、軟ろうには塩酸、塩化アンモニウム、塩
化亜鉛が、硬ろうにはほう砂、ほう酸、食塩、炭酸ソーダなどの混合物
が用いられる。軽合金には、塩化リチウムをふくんだフラックスを用いる。
* 電子ビーム加工;
□ ポイント 真空中で、陰極と陽極の間にに電圧を加え、陰極を加熱すると、陰極か
ら陽極に向かって電子が出る。この電子を工作物の表面に衝突させ、
このとき発生する熱を利用して、穴あけ、溶接、表面処理を行う加工を
電子ビーム加工(electron beam
machining)という。
□ かいせつ 図1のように、電子銃から放出された熱電子は、大きな運動エネルギ
電子ビーム ーをもって一定方向に流れる。この電子の集まりの束を電子ビームとい
う。この電子ビームは、集束コイルや偏向コイルなどの電子レンズで絞
って工作物の表面に焦点を結ばせることが可能である。工作物の表面に
焦点を当てると、電子のもつ運動エネルギーの大部分は熱エネルギーに
変わり、工作物表面を高音に加熱する。これによって工作物を溶かした
り、蒸発させたりすることで加工を行う。
最も利用されているのは溶接の場合で、これまで加工しにくかった金
属であるタングステン、モリブデン、ステンレス鋼、半導体材料、セラ
ミックス、ガラスなどの高融点材料の加工に用いられる。
電子ビーム加工 電子ビーム加工は、レーザー加工よりもスポット径を小さくできるため、
より微細加工が可能である。また、真空中での加工となるため、工作物
表面の酸化がなく、加工中の汚染も少ない。しかし、工作物の大きさが
限定されたり、大容量の電圧が必要となり、装置が高価になる。
* ウォータジェット加工;
□ ポイント 細いノズルから高圧の流体をジェット状に噴射させ、工作物に衝突さ
せることにより、流体や流体に含まれた砥粒によって工作物の切断や穴
あけをする加工をウォータジェット加工(water
jet machining)とい
う。
□ かいせつ ◎
水を使っての切断
電子ビーム ポンプなどで水に圧力をかけ、]最大400MPaの高圧にし、直径0.1
〜1mmの細いノズルで噴射する。水は、音速の数倍という超高速のビー
ム状噴流となり、工作物に衝突することにより工作物を破壊し、加工を
ウォータジェット 行う。図1はウォータジェット加工の例である。
加工
多くの機械加工では、加工の際熱が生じるが、この加工では熱が生ず
ることがないため、金属の加工はもちろん、切断面が熱で変形しやすい
アクリル板や軟質材料の紙や布、食料品などの加工に適している。
また、水に砥粒を混ぜて噴射する方法もある。水と一緒に砥粒が工作
物に衝突するため、水の圧力が比較的低圧でも高い加工能力が得られる。
■ 応用知識 ■■ 噴射加工
水や砥粒などをノズルから高速で工作物の表面に衝突させ、加工する方法を噴射加工と
いう。ウォータジェット加工もその一種である。それ以外には、鉄製ショットや砥粒で鋳
肌清掃に用いるショットブラスト、砂を空気でノズルから噴射し、品物の表面をきれいに
するサンドブラスト、水と砥粒をノズルから噴射し、品物の表面に加工硬化を起こし表面
処理を行う液体ホーミングなどがある。
* 電 解 加 工;
□ ポイント 電解加工は、電解液中で加工したい面と同等の形状をした工具を用い
て、電気化学的に工作物の表面を加工する方法である。
□ かいせつ ◎
電 解 加 工
電解加工は、図1に示すように、工作物を陽極、工具を陰極に接続し、
塩化ナトリウムの水溶液などの電解液中で、両極の間に直流電圧を加え、
工具を送り込み、電気化学的に工作物の表面を連続的に溶かして加工す
る方法である。
電解加工では、工作物と工具の間に狭い隙間を保ち、工具の先端の
小穴から高速で電解液を流出させることにより、工作物の表面が電気分
解を起こし、工作物表面から生成物が電解液中に溶け出し、工具の形状
と同等の形状を転写した部品が加工されるようにしたものである。
工具材料には、固有抵抗が小さく加工が容易で、強さや耐食性などの
面から黄銅が多く用いられている。電解加工の電圧は数十V、電流密度
2〜20A/mm2である。
電解加工は、工具が消耗せず、加工速度が速く、電気分解によるため、
工作物の硬さに関係なく加工が行われるなどの特徴をもっており、ダイ
カスト型、鍛造型および複雑な形状の部品加工に用いられる。
□ ポイント 軟質材料の表面を硬くしたり、さびにくくしてりして部品の性質を改
善したり、光沢をもった美しい表面に仕上げて、製品とするため、金属
などの物質を付着させる表面処理の方法がめっきである。
□ かいせつ ◎
め っ き
めっきは、金属の表面を異種金属で覆い、美しく装飾したり、耐食性
や耐摩耗性、耐熱性を向上させるために行われる電気めっきと、物理現
象を利用して真空中において、部品表面に膜にしたい物質を付着させる
奇相めっきがある。
◎ 電気めっき
電気めっきは、部品を被覆したい金属の金属イオンを含む水溶液中に
浸して、部品を陰極をして直流電流を流すと部品表面で金属イオンが電
解され、金属となって膜状に付着する。
図1は銅めっきの原理を示したもので、硫酸銅溶液の入っためっき液
の中に、めっきを施す鋼板と銅版を離して浸し、鋼板に陰極を、銅版に
陽極をそれぞれ接続し、直流電圧を加え電流を流すと、硫酸銅溶液の銅
イオンは陰極に移動し、陰極表面で銅金属となって鋼板を覆う。一方、
電離した硫酸イオンは陽極の銅版と反応して銅版をわずかに溶かし硫酸
銅溶液となる。
そのしくみを化学式で示すと
CuSO4 → Cu2+
+ SO22-
硫酸銅 銅イオン 硫酸イオン
Cu2+ + 2e- → Cu
銅イオン 電子 銅金属
となる。
◎ 気相めっき
気相めっきでは、物理現象を利用したり、化学反応を利用した方法で
部品の表面に薄い膜を覆うことが可能なため、電気めっきでは不可能な、
プラスチックやセラミックスのような非導電体の表面にめっきを施す方
法である。気相めっきのしくみを図2に示す。
気相めっきには、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気
相成長法があり、眼鏡のフレームをはじめ、ガラス、木材などにめっき
できる。
蒸着法 図2(a)は蒸着法の原理を示したもので、真空にした容器
の中に部品を置き、部品の表面に膜をつくる物質を加熱して蒸発させ、
その蒸気を部品の表面に付着させて、薄い膜をつくる方法である。
スパッタ法 図2(b)に示すように、アルゴンガスが入った容器中
に、被覆させる部品と膜を形成する被覆物質を離して置き、被覆させる
部品側を陽極に、被覆物質側を陰極として電圧を加え、プラズマを発生
させる。プラズマにより、アルゴンイオンは被覆物質に衝突してスパッ
タ原子を飛び出させて陽極上の被覆させる部品の表面に薄い膜をつく
る。この方法をスパッタ法という。
プラズマを発生させる電圧は、数kVとし、圧力は1〜10-2Paであ
る。
イオンプレーティング法 イオンプレーティング法とは、膜にした
い物質を蒸発させながら、スパッタされた陰極を被覆したい部品にして
膜をつくる方法で、蒸着法とスパッタ法を重ね合わせた方法である。
図2(c)はイオンプレーティング法を示したもので、1Pa程度の圧力
のある容器内で、部品のまわりをグロー放電させてプラズマ状態にし、
膜にしたい物質を蒸発させ、プラズマ中を通過させてイオン化させて被
覆したい部品に正イオンを衝突させて薄い膜を付着させる。
イオンプレーティング法では、金属をはじめ非金属など多くの種類の
膜をつくることができ、高温状態で付着させるため付着強度が大きく、
きれいな仕上がりとなる。
気相成長法 膜にしたい元素を含んだ気体を高温に加熱して、被覆
したい部品の表面上に送り、高温での化学反応によって気体が部品表面
に薄い膜をつくる方法を気相成長法といい、図2(d)にその原理を示す。
気相成長法では、金属をはじめ非金属材料など多くの材料に被覆を施
することが可能であり、また、1分間に数μmから数百μmの厚さでつく
れるため被覆される製品も多い。しかし、プラスチックの表面への加工
は部品を高温にするため用いられない。
* 陽極酸化処理;
□ ポイント 陽極酸化処理は、金属表面を酸化膜で被覆する方法で、電解液の中で
金属を陽極にして通電すると、陽極面に酸素が析出し、金属と反応して
表面に酸化物を形成させる。
□ かいせつ ◎
陽極酸化処理
図1は、陽極酸化処理の原理を示したもので、電解液中で被覆を施す
アルミニウム部品を陽極に接続して通電すると、部品の表面に酸化膜が
形成される。
陽極酸化処理には、アルミニウムやマグネシウムなどの防護的な被覆
に用いるため、比較的に厚い酸化膜を形成させたり、電解コンデンサ用
酸化膜のように比較的薄く緻密な酸化膜を形成させる方法がある。
◎ アルミニウムの陽極酸化処理
アルミニウムを脱脂洗浄後、電解研磨を行い、水洗した後電解層で
陽極酸化処理を行う。電解液にはには、数%程度のりん酸、クロム酸、しゅ
う酸などが用いられる。
陽極酸化処理をした表面の皮膜は、アルミニウムの純度が高いほど美
しく、低いほど濁った色となる。
陽極酸化処理では、一般に電解液の温度や酸性度が低く、電流密度が
高いほど硬い皮膜が得られる。
アルミニウムを摩耗に耐えさせるため、表面に厚い保護膜をつくる方
法として、電解液を10℃以下の低温にして、電流密度を増すと皮膜の成
長が短時間で行われ、皮膜の厚さは50μm以上に達する。また、この処
理法で得られた酸化皮膜はビッカース硬さで400〜500程度となり、優れ
た耐摩擦性が得られる。
アルミニウムの陽極酸化皮膜は、活性層とよばれる緻密な薄い層と、
不活性層とよばれる多孔質の厚い層からできてる。
この活性層は、電気的特徴に優れ、誘電率が高く、絶縁性も高いので、
コンデンサ用材料として適している。
アルミニウムはくに酸化皮膜を生じさせ、ペースト状にした電解液を
含浸した紙とともにコイル状に巻き、アルミはく側を陽極に保ち、電解
液を陰極としたものを電解コンデンサとして用いている。
また、不活性層の多孔質皮膜には、孔を利用して着色を行い、その後、
加圧蒸気や沸騰水で封孔処理を施すと、着色料の溶出が防止でき、色彩
に富んだ美しい表面が得られるとともに、耐食性や防汚性に優れた皮膜
となる。
陽極酸化処理における皮膜の色は、一般には透明になるが、金属間化
合物として析出すると白濁してくる。また、合金元素が酸化物となって
酸化膜中に入ると、それぞれの金属特有の色を呈する。
◎ マグネシウムの陽極酸化処理
マグネシウムの陽極酸化処理は、耐食性を向上させるために行われる
が、表面皮膜の色彩も電解液の種類や処理法でそれぞれ特有の色を呈す
る。
マグネシウム合金の陽極酸化処理は、前処理としてふっ化水素酸液に
つけて、表面を活性化した状態で処理を行う。電解液は、重クロム酸ソ
ーダ、硫酸アンモニウムを主体にした溶液が用いられる。酸化皮膜の色
彩は、褐色または黒色となる。また、電解液により淡灰色や淡黄色、緑
色にもなる。
* 塗 装;
□ ポイント 塗装は、表面層の腐食を防ぐ目的で部品などの表面に塗った
り、また、美観を与えるため色彩を考慮して塗料を塗る表面処理法であ
る。塗装を行うにあたって、部品の表面の油脂や汚れをきれいに取り除
く処理がなされ、下塗り、中塗り、上塗りが行われる。
□ かいせつ ◎
塗装のしかた
はけ塗り 塗装法には、塗料を含ませたはけで部品表面に塗るはけ塗り、塗料中
浸し塗り に部品を浸しつける浸し塗り、塗料を霧状にして部品表面に吹付ける
吹付け塗装 吹付け塗装、さらに、静電塗装、電着塗装がある。
静電塗装 静電塗装は、図1に示すように、部品を陽極、塗料を噴射する装置を
陰極として、直流の高電圧を加えると、塗料は帯電する。その塗料を微
粒化して噴霧すると、静電気の吸着作用により、陽極側の部品の塗料が
付着する。
電着塗装 電着塗装は,図2に示すように、電着槽に濃度の低い水性塗料を入れ、
部品を陰極として、直流電圧を加えると、槽内の塗料がイオン化して、
陰極側に引きつけ付着する。狭いすきまにも入り、付着力が強いた
め防食効果は大きく、自動車のフレームなどの下塗り塗装に活用されて
いる。
◎ 塗料のいろいろ
塗 料 塗料は、塗膜、顔料、溶剤から構成されている。
塗 膜 塗膜には、油性塗料、水性塗料、セルロース誘導体塗料、合成樹脂塗
料がある。表1に塗膜の種類を示す。
溶剤は、塗膜を溶かし適切な粘性の液体にするもので、塗膜のみを溶
かした液体は、透明な塗膜となる。
塗料には各種の色彩が用意されているが、塗料の着色には顔料を混ぜ
る。顔料には、表2のような無機着色顔料と有機着色顔料とがある。
板金用金型は被加工物の板厚によって技術的に大きな差異がある。例えば、極
薄板(一般に0.2〜0.3t以下)の分野は、普通の板金加工法と言うより「ばね屋」
さんの分野と考えた方が良い。板ばね業界では、フォーミングマシーンと呼ば
れる小物の板およびワイヤー類を専門に加工する大量生産向き機械があるが、こ
こでは300〜400mm程度以下の通常の機械部品加工を対象に考える。
*抜き型; 抜き型で最も重要なのは、ポンチとダのクリアランス設定であり、
このクリアランス量によって金型の善し悪しが決まると言っても過言ではない。
勿論ポンチとダイのクリアランス以外にも、ダイの逃げ角度・材料・切断(刃)
部の耐摩耗性など金型寿命に影響する要因も考慮しなければならない。
一般に被加工物の板厚が薄いほどこのクリアランスを小さくする必要があり、
クリアランスが大きいと製品に「バリ」が発生するし、小さいと「かじり」の
原因となる。金型メーカでは、被加工物の材質や板厚によって最適なクリアラ
ンスを実験によって定めており、これが各メーカのノウハウとなっている。
簡易金型: 簡易金型とは、下記図2に示すようにポンチ(上型)とダイ(下型)
をワイヤーカット加工法で同時に製作する手法で、金型寿命は劣るが短納期で
安価に製作できることから、新製品が目まぐるしく変化するOA機器用部品等に
多用されている。
*曲げ型;曲げ加工で注意しなければならないのは、「スプリングバック」と呼
ばれる曲げ加圧除去後に材料の弾性による「戻り見込み量」と曲げ加工による材
料の「伸縮見込み量」である。いずれも金型メーカではこれらの見込値は豊富な
経験により設計時点であらかじめ予測し製作するが、金型が完成した時点で必ず
予定値と一致することを確認する作業が必要となる。(全ての金型で必ず行うこ
の作業を「トライ」と呼んでいるが、トライの結果次第で補正作業が行われる)
また板金曲げ加工でよく問題になるのは、被加工物の板厚精度によって曲げ
加工後の寸法精度にバラツキが出ることがある。一般に穴あけ加工や外形加工を
終わった後に曲げ加工を行うため、これらの問題が発生することとなるが、日本
のメーカ材料を使用する限り板厚精度の問題は殆ど見受けられなくても、安価な
海外製メーカの材料に切り替えた途端に問題が発生した例は多い。
*順送加工用金型;多工程の金型を一つにまとめ(分割の場合もある)、材料を
順次一定のピッチで送りながら多数工程を同時に作業できるようにした金型のこ
とで、ロール材(一般に幅が小さく、薄い板をロール状に巻かれた)を使用して、
単発プレスの場合の材料セッチングと取り出し工程を自動化したものである。
電子部品(特に半導体)のリードフレームやコネクター端子部品の様に小さくて
大量に生産する場合に適用される。また、順送金型で加工終了した後もロール状
に巻き取り、後工程(鍍金処理等)でそのまま使える様にする場合が多い。

樹脂モールド金型・ダイカスト鋳造金型のように溶融温度以上に加熱された
材料を金型内に流し込み、製品を作る成形加工法には次の長所・短所がある。
【長所】
(1) 大量生産が可能である。
樹脂モールド・ダイカスト鋳造ともに一つの金型で数十万ショットの寿命が
一般にあり、定期的なメンテナンスを施せば更に何百万ショットも可能である。
(2) 複雑な形状が得られ、最近の技術進歩でかなりの高精度が可能である。
金型構造上の制約さえ満足すれば、切削加工法で困難な複雑形状も可能。
(3) 樹脂・アルミ鋳造の場合は軽量化が図れる。
鉄鋼材の比重7.85に対し、樹脂の比重は1.1〜1.5、アルミ2.7と断然軽い。
(4) 樹脂の場合電気絶縁体であり、なおかつ腐蝕しない。
金型費用を除けば、部品加工費は圧倒的にコスト的に有利となる。
【短所】
(1) 金型が高価である。
小部品でも数百万円、VTRの前面パネル程度の物で700〜1500万円程度の
金型費用がかかる、ダイカスト鋳造金型の方が若干高めであるがほぼ同様と
高価であり、金型消却できる大量生産部品でないとコスト的に釣合わない。
(2) 形状変更が困難である。
製品に肉付けする方向の改造は金型を削り取ることで多少の可能性が有るが、
製品を削る方向の変更は金型に肉盛りすることとなり、大変困難な作業を伴
い、場合によっては不可能なこともある。従って図面変更は十分注意が必要。
(3) 寸法精度を出し難いことが多い。
成形条件(射出圧力・成形時間・金型温度 等)の影響を受け易い、特に大
きい製品寸法では寸法精度に十分な余裕を見ておく必要がある。
樹脂モールドの場合、400mm程度の外形寸法で±0.3mmが経験上の公差。
(4) 樹脂の場合、比較的に強度が劣り耐熱性に弱い。
近年材料の進歩で一部には、金属材料に劣らない樹脂材も出現しているが、
一般的には金属とは比較できない、また耐熱温度も60〜100℃、熱変形温度
が80〜110℃程度と熱に弱く、高温になる個所には使用できない。
(5) 金型構造上、抜き勾配・パーテイングライン・ノックアウトピン・ゲート位置
が不可欠であり、製品設計者はこれらの知識を習得した上で設計する必要
がある。
(6) 金型寸法は材料の熱収縮率を見込んだ経験値で設計製作しているため、実際
に出来上がった時点で「トライ」し、誤差修正する必要がある。
この修正に時間と費用がかかるため、納期遅延となることが稀ではない。
また、このトライ回数で金型屋の技術を問われることも有り、俗に3回以上
のトライが必要となる様では赤字と納期遅延で問題だ、と言われている。
*樹脂射出成形部品設計上の注意点
射出成形に使用される樹脂材料は殆どが熱可塑性樹脂と呼ばれる物で、加熱と
冷却を何回繰り返しても、流動と固形を繰り返す性質をもつ樹脂材料であり以下
の様な部品設計上の注意点が必要である。
製品の肉厚: 部分的に小面積(6×5mm程度)であれば、肉厚0.5mm程度の
ものが成形可能であるが、一般には1.5〜3.0mmで肉厚を設定すること。また、
肉厚は出来る限り一定とし、急激な変化は避けるべきだ。
抜き勾配が必要: 射出成形機の金型は下図に示す様に横向きに設置され、キャ
ビティ型とコア型の二つから構成されている。溶融樹脂材料をスプールAから、
金型内部に高圧で射出すると、キャビティ型とコア型の間の空間において、冷却
固体化し左側(コア側)へ食い付く様な形状に設計されている。
製品の取り出しはエジェクトピンBによって突き落として行う、抜き勾配は
射出成形製品を金型からスムーズに排出するために必要となる。金型より製品を
抜き取り易くするためキャビティ側はコア側より勾配を大きくとり、1度以上・
通常は1.5度程度の抜き勾配を設ける。この抜き勾配が小さ過ぎると金型面にカ
ジリが発生しやすく、最悪の場合はキャビティ側に製品が食い付いて製品を変形
を起こすことになる。
コア側にも一般的には1度程度の抜き勾配を設けるが、コアへ食い付きを良
くするため、抜き勾配を小さく取ったり、下図の様にアンダーカットを設けるこ
ともある。抜き勾配は通常1度〜1.5度で、実用最小値は0.5度と考えて良い。
設計上の隅角のR: 金型にエッジ部を設けることは、強度の点から好ましく
ない。一般にキャビティ側は製品のデザイン上で外観になるため、コーナーR
が決められてしまうことが多い、一方デザインに関係しないコア側は肉厚を
均一にすること及び湯流れを考慮したRを付けるのが良い。また、裏面に設
けるリブやボスなどの根元にRを付けないと、製品になって簡単に折れたり
離型時に折れたりするトラブルの原因となる。しかし、大きすぎるRの場合
にはこの部分の肉厚が局部的に大きくなり、製品の表面に「ヒケ」と言われ
るクボミが出やすい、この様な場合0.3〜0.5mm程度のRをつけると良い。
パーティングライン: パーティングライン(以下PLと言う)とは、金型を
構成する二つの部品(キャビティ型とコア型)の分離面のことである。
パーティングラインは、下図の様に金型製作上加工基準面とする事が多く、
極力同一面にするべきであり、製品ではこの二つの合わせ面に隙間があると
バリが発生することが多い、たとえ金型が新品の時はバリが無くても量産途
中でバリが徐々に大きくなる事をよく経験する。金型屋さんでは、この二つ
の型の境界面を如何に摺り合わせるか腕の見せ所とも言われている位である。
従って、設計上でなるべく加工精度を出し易いような配慮が重要となる。
また、この様な十分な配慮にもかかわらず現実には、バリを皆無にするのが
大変困難であるため、設計者は製品の機能面でPL部にバリが出ても使用上
差し支えが無いような工夫をしておくのが賢明である。
対策として下図のA部品の様に寸法aを0.3〜0.5mm程度取り、バリに手がふれに
くくする工夫もある。
また、下記のようなナイフエッジは人の手が触れると怪我をするので、ナイフエッジを避けるため
にパーティングラインをRじまい(R止り)までずらして、PLの段差を0.1〜0.3mmにする
対策がよく取られる。
ヒケに注意:
下図の様に、板厚tの平面にリブを設ける場合、a/tを0.6程度以下にしないと、矢印部にヒケ
(へこみ)を生じる。
軽度なヒケであれば、ツヤ消し塗装や表面にシボ加工を行い目立たない様に出来るが、生地の
光沢やツヤやボスなどをなるべく設けない様にする事が望ましい。
ウエルドに注意:
製品に樹脂の流れを妨げる穴などがある場合、下図の様にゲートと反対側にウエルドが発生する。
これは、幅、深さとも、数ミクロンの溝であるが、透明品やメッキ品ではかなり目立つ。
割れているような印象を与える為にクレームが出る事がある。
ウエルドはゲート位置から離れるほど、強く長く出るため、ゲートを穴の近辺に配置する。
また、ウエルドを目立たない方向の出させるため、ゲート位置を考慮する必要がある。
表面にシボやラインを施したり、印刷によってウエルドを目立たない様にする方法も良く
用いられる。
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*樹脂モールド部品の二次加工;
塗装処理:
外観表面を美しく仕上げるため、製品に塗装処理を施す事が多い。
ここで問題となるのは塗装の見切り方法である。
マスキング治具による方法などがある。
テープ貼り付けによるマスキングでは、美しい見切り線が得られるが、テープ張り付けに
時間を要し、大量生産向きではない。
また、製品のコストアップとなる。
マスキング治具を使用する場合、治具がはまり込む個所(溝、段等)を下図の様に製品に
設ける必要が生じる。
いずれにしてもマスキングを施せば製品コストが上がるので、出来れば全面塗装で行ける
様に検討する事が望ましい。
メッキ処理: プラスチック製品に金属光沢を持たせる方法として有効で、押し
ボタンなどの小物部品に使用される。プラスチックは本来、非導電性であるため
電気メッキは不可能であるが、予め硫酸化銅液中に浸け無電解メッキと呼ばれる
手法で下地処理することのより導電性を与えてメッキ処理を施す事が出来る。
ホットスタンプ処理:
あらかじめ、印刷された箔(シール)をプラスチック製品面に熱圧着させる方法である。
この方法により、木目、金属の光沢などの良好な面に仕上げる事が出来る。
ただし、純粋な平面や曲面には加工できるが、複雑な面や多面にわたる加工には不向き
である。
また、下図の様に外縁にはエッジが出やすいので、外縁にはR0.2〜0.5mmを付ける必要がある。
印刷処理: 一般に多用されるのは、シルクスクリーン印刷である。(一般にシル
ク印刷と呼ばれている)この印刷は、印刷部分が少し盛り上がった様になるため、
下地の影響を受け難く、また、インク中の溶剤が樹脂を溶かすので印刷強度が大
きい。しかし、欠点として1工程で1色しか印刷出来ないので多色印刷ではコス
トが高くなる事と、印刷面より凸部が近くにあると印刷出来ない事である。
組立て処理: プラスチック成形品を使った製品は一般に多数の部品を組合わせ
て作る場合が多い。そこで、以下に組立てで使われる要素を説明する。
(1)焼き溜め
下図の様に、片方の部品から直径2mm程度のボスをだして、もう一方の部品の穴に通し
た後、ボスの頭を焼きつぶして結合する方法で一般に良く用いられる。
焼き溜め代hは2〜2.5mm程度にとるのが良い。
(2)接着
接着には、両面接着テープを用いる方法と、ボンドなどの接着を用いる方法がある。
両面接着テープを用いる方法は、力の掛かる所や、はがれようとする力が働いている
部品の接着には不適当である。
しかし、接着面積が広いプレートなどの接着には有効である。
外観部分に接着剤がはみ出さない様にするには、下図の様に部品の接着面外周に逃げ
溝を設けるなどの配慮が必要である。
接着剤を用いる方法は、手間がかかる事や、部品の外観を汚す可能性もあり、あまり
量産的ではない。
接着には外周に逃げ溝が必要
(3)ツメによる係り留め
下図の様にツメを設けた部品を、ツメ部の弾性を利用して他の部品穴に挿入し、
係り留めをする方法である。
この組立時間がかからず量産性が高いので、応用範囲も広い。
(4)ネジ溜め
下図の様なボスを設け、他の部品をタップタイトネジで固定する。
この方法は、かなり強力な固定力が得られる。下図は直径3.0mmのタップタイトを使用
する場合のボス寸法の例を示す。
熱膨張の影響に注意:
異なった材料の部品を組合わせる場合、双方の熱膨張係数の違いが良く問題になる。
プラスチックでは熱膨張係数が大きいため、金属部品との組合わせには特に注意
を要する。
VTRなどの電子機器では、アルミニウムの板材をプラスチックと組み合わせて使用
する事が多い。
この際、両材料の熱膨張係数の違いを、一般には−20〜60℃の範囲で考慮する。
計算するとかなりのクリアランスが必要になるので、下図の様にアルミニウムの端の
部分に十分なクリアランスを取っておかないと、温度差によってアルミパネルが
突っ張って中央が浮き上がったり、剥がれ落ちたりする不具合が発生する事になりかね
ないのです。
*ダイカスト鋳造成形部品設計上の注意点;
ダイカストは、アルミ二ウムや亜鉛などの比較的融点の低い金属に適用され、
肉厚は2〜6mmの薄肉で精度の高い緻密な鋳物が得られる。溶融材料を金型内
へ加圧注入する点で樹脂の射出成形と類似しており、設計上の注意点も共通する
内容が多い。但し、金型に注入される時の圧力が5〜200MPaと高い事や、成形
後に切削加工して超高精度が得られる事、製品の剛性が樹脂より遥かに高い事な
どの点で、樹脂成形部品が製品の外側カバー類に多く使用されるのに対して、ダ
イカスト鋳造成形部品は、内部の高精度を要求する重要部分に多く使われる。
(例えばVTR読み取りヘッド機構周りのベースフレームなど)
抜き勾配・パーティングライン・ノックアウトピン・ゲート位置を考慮しなけれ
ればならない点では、樹脂モールドと全く同じである。
切削加工時の治具セットは3点支持が良い: ダイカスト部品は後加工で切削
精度を出す事ができるが、この利点を発揮するためには加工治具の構造を配慮し
た設計が必要となる。すなわち、最初に加工基準面を出す時に全てが鋳肌面で通
常の機械加工時のように適当な平坦面が存在しない。下図のように3点支持構造
の治具を想定し、予め治具への突き当て面(鋳肌面でも平坦となる座)3ヶ所を
バランスよく配置しておけば、A面・C 面の加工が楽に行える。
(2点でも、4点でも上手く行かないが、3点だけがOKとなる点に注意)
焼結の成形方法については、初級編で既に説明しているのでここでは省略する
が、その金型は、成形金型とサイジング金型に分けられる。
*圧縮成形金型; 俗に「圧粉型」とも呼ばれるが、この型の特徴は何と言って
も大きな加圧力(200〜700MPa)と粉体状金属を圧縮するために製品寸法の6〜
8倍の細長い形状(圧縮方向に)となる事だろう。また、圧縮方向に直角方向の
断面が圧縮全ストロークに渡って同一形状であれば非常に楽であるが、ストロ
ークの途中で断面形状が変化する時、圧縮率を均等にする工夫が必要となる。
一般には最初の圧粉型で密度を70〜80%まで圧縮するが、目的によっては更
に密度を高くして(95〜97%)高強度な機械部品を得ることもある。
*サイジング金型; サイジング金型とは、焼結後に再圧縮と同時に最終寸法の
仕上げ処理加工を行うもので、この加工により焼結部品の寸法精度が格段に精密
化できる。下図の軸受け部品の例では、軸受け内径精度をG5級位(数μ公差)
まで上げることも可能となる。
焼結部品設計上の注意点: 焼結部品の特徴及び注意点は以下の通りである。
(1) 高融点材料の成形が可能である事を利用して、タングステン・酸化アルミ ニウム(ジルコ二ウムの様なセラミック材)・コバルト等の製品が得られる。
(2) 超硬合金に代表される様に、特種合金を作ることが可能である。 (3) 含油軸受けの様に、圧縮密度が100%に満たないで気泡を有する点を利用し、 潤滑油を含ませる事で優良な軸受け材料が得られる。
(4) サイジング加工により、非常に高精度な部品が得られる。
(5) 圧粉成形・サイジング加工ともに一方向のストローク移動に限定されるため
設計部品の形状にかなり制約を伴う点を理解する必要がある。
(6) 角部の面取り形状は、押し型に鋭角先端が付けられないため平坦部を設けな
ければならない。このため下図のような形状となってしまう。
(7) 金型費用・金型製作時間が必要となるが、部品の加工時間が短く且つ、材料
の無駄がないことから大量生産でコストメリットが大きい。